ID:104863
G*R
by K・カヲル
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■『女性死神協会 会議中02番外編2(後半)』
『決戦前日』


(二月十三日 十二番隊執務室)
 何冊もの本を抱えた七緒が十二番隊執務室の扉を開けると、なぜかそこにはネムだけではなく阿近がいた。
「どうなさったのですか、阿近さん。なぜここに?」
 ソファに反り返って座っていた阿近は、肩越しに顔だけ向けて七緒を見て顔をしかめた。
「何故って、そりゃアンタ、アンタ方のせいでしょうが」
 七緒が近づくと、ソファの前の机には小指ほどしかない小さな瓶がたくさん並んだ箱が置いてあるのが見えた。それを覗き込んでいると、ネムが七緒の抱えている本に手を伸ばす。
「わざわざすみませんでした」
 七緒はひょいとネムに向き直り、本を渡す。
「いえ、こちらこそ長い間お借りして申し訳ありませんでした……涅隊長は?」
「本日は研究がありますので、マユリ様は技術局にいらっしゃいます」
「なら、明日にでもまたお礼に来るわ」
「はい。判りました」
 ネムは受け取った本を棚に戻し始める。手持ち無沙汰になった七緒は、再び箱の中の小瓶を覗いた。阿近がそれを一本取り出して、七緒に手渡した。手のひらの瓶の中では薄い薔薇色の液体がたぷんと揺れている。
「……なんですか、これは」
 七緒が阿近を見ると、阿近はにやりと笑った。
「改良した媚薬ですよ。アンタ方のご要望でしょうが」
「…………要望はしておりませんが」
 口の端が引きつるのを感じながら、七緒は努めて冷静に答える。本を棚に戻し終えたネムが七緒の横に立ち、
「レシピ発表後、女性死神の皆様から是非にと」
と囁くように言った。
「聞いてないわよ?」
「皆様、これは内密にと申されるので」
「……そりゃ当然そうよね」
 どことなく疲れを感じて、七緒はずれた眼鏡の位置を直した。そして阿近を見る。
「どうして改良されたんですか」
 阿近は苦笑した。
「どうしてって……試食のとき、アンタ方に全然効かなかったってネムさんから聞かされたからでしょう。副隊長・隊長クラスはどうしても薬に強いから難しいでしょうが、こっちにも意地がありますからね。局長も加わって技術局の最強の面子で開発しましたよ」
「涅隊長もですか……」
 光に透かすように小瓶を持って眺めつつ、七緒はうんざりして呟いた。薄い薔薇色がまるでしあわせを形にしたように美しい。が、話を聞いた後では魔性の色にしか見えなかった。
 七緒の思いを見透かしたかのように、阿近が笑う。
「毒じゃあないですよ。一時的に催淫効果があるってだけですから、だからその間に自力でどうにかしろっていうだけの話で」
「だからどうしてそう腕力で色恋沙汰まで片付けてしまおうとするんですかあなた方は」
 七緒はうんざりと脱力して言う。
 その様子を眺めていたネムは、首を傾げた。
「収益の一部は女子死神協会の資金に回す予定ですが」
「よくやったわネム。がんがん販売しなさい」
 急に立ち直った七緒がネムの肩を叩く。ネムは懐から販売予定数や開発費を書き記した紙を取り出して説明を始めた。熱心に頷く七緒と淡々と説明するネムを眺め、阿近は一言、
「女って、怖ぇよなあ……」
と呟いた。



(二月十三日 十一番隊執務室)
 終業直後に十一番隊執務室を訪れた七緒は、牛若丸よろしく空中を飛び回るやちると足の踏み場にされている一角の姿を眼にして失礼しましたと扉を閉めた。
「えっ、ななおちゃん? どうして?」
 やちるが慌てて扉を開けてくる。七緒は冷静に眼鏡の位置を直し、
「お取り込み中だったようですので」
と言った。やちるは笑顔の手本のように笑い、
「もう大丈夫だよー。入って入って」
と手招きした。それに促されて七緒が再び足を踏み入れると、頭に草履の跡をつけた一角がふて腐れて床に胡座をかいている。弓親の姿はなく、剣八は何事もなかったかのようにソファで茶をすすっていた。
「おう、伊勢副隊長。お久しぶりっす。茶ぁ飲みますか?」
 一角が眼光鋭く七緒を見上げた。七緒は首を横に振り、
「いえ、草鹿副隊長をお迎えに参上しただけですので」
と言う。一角がじろりと七緒の足下にいるやちるを睨んだ。

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02月22日(金)
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