ID:104863
G*R
by K・カヲル
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■『女性死神協会 会議中02番外編2(前半)』
『決戦前日』

(二月十三日 十番隊執務室)
 十番隊執務室の扉を開けて七緒は見たものは、床に土下座している三番隊隊長市丸ギンの姿だった。
「……おう、伊勢か。いいところに来たな」
 ソファに反り返って座っている日番谷が七緒に目を向け、不機嫌そうな顔で言う。
「市丸のこんな格好、滅多に見れねえぞ」
 その横で乱菊はソファの背に腰掛けるようにして苦笑している。ギンはというと、床に正座したまま上半身を起こし、
「君が首を縦に振らんからなやいの」
と抗議する。
「だいたい、どうして君が副隊長の行動を制限しはるん? ボクに物贈るん、彼女の自由やないの」
「たかがチョコ一つで床に這い蹲るような男に、松本からのチョコをやるはずがねえ」
 日番谷が冷たく言い放ち、ギンを見下す。ギンも負けじとばかりに酷薄の笑みを浮かべた。
「いややねえ、これだから度量の狭い男は。更木さんなんぞ、ボクがやちるちゃんに頼んどるの笑って見てはったけどなあ」
「それは哀れに思って蔑んでたんだろ」
 二人の隊長からじわりじわりと霊圧が放たれ始める。黙って眺めていた七緒は溜息をついて眼鏡の位置を直した。
「お取り込み中のところ失礼致しますが」
 七緒が声を掛けると、二人が同時に霊圧を引っ込めて顔を向ける。
「つまり市丸隊長は、松本副隊長のところにチョコレートの催促にいらっしゃったわけですか」
「そうや」
 市丸と日番谷が同時に頷く。
「そして草鹿さんにも」
 市丸は頷いた。七緒は二回目の溜息をつく。
「もしかして、先程八番隊に私を訪ねて来られた用件というのは」
 七緒の問いかけに、市丸はへらりと笑って、
「義理でええねん。チョコくれへんやろか?」
と言った。七緒は脱力してがっくりと項垂れる。それを見て日番谷は満足げに頷いた。
「ほれ見ろ。伊勢も呆れてるじゃねえか。チョコの数なんざ気にしてんじゃねえよ」
 その言葉に市丸がきっと日番谷を睨み上げる。
「君は副官さんが女の子やさかい、確実なんやからそらええやろ。ボクなんかイヅルなんやで。イヅル、さりげなくいつのまにか他隊の子からもチョコ仰山もろうとるんやで。ボク隊長やし、他隊の子は恐れおおいんか知らんけど、全然くれはらんもん。三番隊は野郎ばかりやさかい、期待できへんしな」
「隊長が理由じゃねえだろ。単にお前がもてねえだけだ」
「失礼なお人やなあ。ボク、めちゃめちゃもてるわ。虎徹姉妹のお二人さんもやちるちゃんもボクが口を開く前にチョコくれる言いはったからな……それに、雛森ちゃんもくれはるんよ」
 日番谷がぴくりと片眉を上げた。
「……言っておくが、雛森からは毎年もらってるぞ。この習慣が認知されるようになってからずっとな」
 ギンはにやりと片方の口の端を上げて笑う。
「残念やなあ。ボクも毎年や。しかも多分ボクら、同じレベルのチョコもろうとる」
「いいや。俺の方がお前よりいいもんもらってる」
「そらまた、残念ですなあ。日番谷隊長、ボクらより上があるよって」
 眉間の皺がじわじわと深くなる日番谷を見て、市丸は楽しそうに声を低めた。
「ボク、藍染さんが雛森ちゃんからもろうたチョコ、見たことあるさかい」
 日番谷からひやりとした霊圧が放たれた。負けじと市丸もまたちろちろと霊圧を放ち始める。七緒は黙ったままの乱菊を見た。乱菊は苦笑したまま、七緒に肩を竦めてみせる。七緒は三回目の溜息をついた。
「市丸隊長、義理は一枠しかございませんので、同情チョコでよろしければ差し上げます……味は保証致しかねますが」
 七緒がそう言うとギンはへらりと笑って霊圧を引っ込めた。そしてその顔のまま乱菊を見上げる。日番谷が眉間に限界まで皺を刻み込んだ。
「松本、こんなガキみたいな駄目な大人にやるこたぁねえぞ」
「確かに、……子供みたいですねえ」
 乱菊はそう言って、静かに笑ってギンを見た。ギンもまた、小さく口の端を上げる。
「隊長に土下座までされたら差し上げないわけにいかないでしょう。お返しは二倍でお願いします」

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02月21日(木)
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