ID:104863
G*R
by K・カヲル
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■中詞5題
特別ではないある晴れた午後の日 ギンと乱菊 051121
あなたなしでは空も飛べなくなった私を許して 乱菊とやちる 051201
君のその笑顔を守るために、 ギンと乱菊 051212
くだらぬ嘘のための犠牲 ギン 051216<注:人によっては不快な内容かもしれません(グロ?)
僕を動かす世界でただ一つの存在 ギン 060106NEW
配布元 キョウダイ
『僕を動かす世界でただ一つの存在』
猫の姿を目の端にとらえたような気がしてギンは立ち止まった。周囲を見渡して、左後ろの植木の根本に目をやる。黒く、まだ幼いのかひどく小さい猫がへたりこんだ格好でそこにいた。
「あらら、まだ子供やないの、君」
小さく声をかけてギンは近づくと膝を抱えるようにして黒猫の前にうずくまる。隊長羽織がばさりと地面に広がった。吉良がこの場にいたら叱るだろうとギンは思うが、気にせずに膝までついて目線を下げた。黒猫は動かない。ただ金色の眼をギンに向けて、頼りない声で一声鳴いた。
「腹減っとるん? 親はおらへんようやねえ」
人差し指を伸ばして顎の下を撫でると、仔猫は眼を閉じて喉の奥を鳴らす。自分の指の大きさと仔猫の顔の小ささに、ギンは苦笑した。
「しゃあないなあ。イヅルなら怒りつつも何かくれるやろ」
ひょいと片手を仔猫の腹の下にいれると、軽々と持ち上げてギンは自分の懐に仔猫を放り込む。仔猫は少しの間、居心地悪そうに動いていたが、やがて良い体勢になったのか動きを止めた。ギンはそのふくらみを眺めて眼を細める。このぬくもりは酷く懐かしかった。
「ギン、ほら、猫がいる」
川の中に設けておいた仕掛けから魚を捕っていたギンは、腰を伸ばして振り返った。乱菊は岸辺で焚き火を指し示す。その傍に三毛猫が悠然と座っていた。
「火ぃ恐れへんのやねえ」
「人に馴れてるんじゃないの。あたし達のことも怖がってないみたいだし」
ギンから魚を受け取っては木の枝に刺していた乱菊は、とりわけ小さい魚を一尾、ひょいと猫に投げた。三毛猫は顔をそれに向けると、ゆっくりと体を起こして歩み寄り、それをくわえて前足で押さえるようにして食べ始める。
「ほら、魚をもらっても逃げ出さないもの」
「乱菊はお人好しやなあ。魚あげんでも」
ギンの言葉に、乱菊は大きく笑う。
「これくらいの小さな魚くらい、いいじゃないの。盗みに来たならともかく、こうして待たれたらあげずにいられないわ」
「そういうもんやろかねえ」
ギンは本心からそう呟いた。乱菊のように思ったことのないギンは、乱菊の真似をして仕掛けの中にいた小魚を猫に放り投げた。猫は驚いたように一瞬飛び退き、そして近づいて跳ねる小魚を前足で押さえ込むとギンに向かって鳴いてみせた。
「あ、御礼言いよった」
驚いて眼をわずかに開いたギンに、乱菊が笑いかけた。
「ほらね。あげるのもいいもんでしょ」
乱菊を見ると、乱菊はギンを見てことのほか嬉しそうに笑っていた。乱菊が魚をもらったみたいやなあ、と小さく呟いてギンも笑ってみせる。笑ってみるとなんだか嬉しくなってきて、ギンは仕掛けの中の小さな小さな魚をまた猫に投げた。猫はそのたびにギンに鳴いた。
その三毛猫とはしばらく共に過ごした。
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02月17日(日)
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