ID:104863
G*R
by K・カヲル
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■『女性死神協会 会議中01・後半』
『01・紹介文を書こう(後半)』

「はい、それでは会議を再開したいと思います」
 七緒の声に、理事の面々と会長は口の中の菓子を慌てて飲み込んだ。やちるは口をもごもごと動かしながら黒板の前の定位置に移動する。
「次は八番隊からですね。担当者はどなたでしたか」
「あ、はーい。あたし」
 手を挙げて微笑む乱菊を見て、七緒はがっくりと項垂れた。
「また隊長に相談なんてなさってないですよね」
「相談なんてしてないわよう」
 乱菊は快活に笑うと、文の書かれた紙を手にする。

「八番隊、京楽春水隊長。常に大人の魅力を惜しむことなく周囲に撒き散らしている京楽隊長は、実はとっても真面目な努力家さん。しかも、常に周囲に気を配り、部下の様子を見守っていらっしゃる、隊長らしい隊長さんだぞ。女の子を追いかけてばかりのように見えてるかもしれないけれど」
「追いかけてばかりじゃないですか!」
「まあまあ、まだ途中だから。
 男性社会の中でまだまだその地位を確立できていない私達女性死神のために、日々悩みをきいてその解決に奔走する素敵な隊長さんなの! ほら、これを読んでいるあなたも仕事の終わった宵にでも京楽隊長に悩みをそっと打ち明けてごらんなさい。豊富な人生経験から導き出される答えに」
「待った」
 七緒が肩を震わせつつも片手を前に突き出して朗読を止める。俯いて表情は見えないが、眉間にはくっきりと皺が刻まれていた。
 乱菊はへらりと笑ってみせる。
「どしたのー」
「隊長に、相談は、されていないんですよね」
「してないわよう。ちゃんと一人で考えたのよ、これ」
「ならば」
 かっ、と顔を上げて七緒は眼鏡の位置を直す。眼鏡がきらりと光った。
「先日、隊長が注文されていた大吟醸・古都の梅(本数限定生産・金賞受賞)の行方はどちらでしょうか」
「…………あららら」
 乱菊が素知らぬ顔をしてどちらともつかぬ方を見る。
「一人で考えたには考えたのよ」
「ならばどうしてそのように、隊長に女性を近づけるような危険な文章になっているのでしょうか」
「危険って、七緒ー、自分の隊長じゃないの」
「だから申し上げているんです!」
「あ、でもね、そんな危険じゃないのよ。ホントに。最後の締めはこうだもの。
 しかし隊長の愛する女性はただ一人。実はとっても少年のように純粋な隊長はずっと一人の女性を想っているの。隊長はそっと囁いているわ。『愛してるよ、七緒ちゃん』
 っていう」
「今更媚びても駄目です! ……っていうか私は無関係です! 全面的に書き直してらっしゃい!」



「次の方! 九番隊をお願い致します」
「は、はい。私です」
 勇音がおずおずと手を挙げた。
「九番隊、東仙要隊長。物静かで平和を愛し、万物を愛している隊長です。争いを悲しみ、世界が常に平和であるために日々おつとめしておられるお姿は、皆の目標です。謙虚で、その力をふるうことのなくお優しく、どんな立場の人間にも等しく接せられる隊長。常に自然な姿で、一見すると誰も気付かないけれど、実は隊長はお目が全く見えません。そのハンディを全く感じさせないのは、隊長のお力と努力の賜。東仙隊長は本当に素晴らしい方なのです」
 七緒は一々頷きながら聞いている。それを見て勇音はほっとしたように笑み、朗読を続けた。
「そんな隊長にも、もちろん人であるがゆえの可愛らしい一面もあります。夏には、側溝で大発生した蚊にまでその平等精神を振りまいて余計な殺生はしないようにとのお言葉。九番隊の隊員達は一日に最高十五カ所も刺されたそうです。また、ゴキブリにまでそのお言葉はかけられたため、隊員達は仕方なく、ゴキブリを発見すると手袋でそれを捕らえては隊舎の外へ追いやるように。また、お目が見えないことを逆手にとっておられるのか、ときおりしれっと『ああ、すまない。君のものだと気付かなかったんだ』と副隊長の隠しておいた名前まで書いてあるお菓子を食べてしまわれることもあるお茶目な一面も。それ以来、副隊長は自分のお菓子は執務室には持ってこな」
「ちょっとお待ちを」
 七緒が口の端を引きつらせて朗読を止めた。勇音が不安げに顔を上げる。

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02月16日(土)
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