ID:104863
G*R
by K・カヲル
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■06 死に場所
腐臭にも似た臭いが重く、地を這うように漂っていた。虚から緩く放たれる霊圧は、死の臭いがする。心なしか黄土色をしたそれは、怒号と咆哮の飛び交う方へ向かうほど濃くなっている。そこかしこにある廃屋は、何かがぶつかり合う音に揺れて少しずつ崩れ落ちていく。土埃が舞い上がり、視界を更に遮る。
勇音は目を凝らした。
睨むようにしても土埃と虚の霊圧に隠れて戦闘の様子は窺えない。勇音は薄黄色の臭気の中で神経を冴え渡らせる。奥の方で迸る稲妻のような霊圧はおそらく剣八のものだろうと、それに震える肌をさすって勇音は思う。その激しい霊圧に掻き消され、他の死神の霊圧を捉えることが難しかった。それでも勇音は四方八方に意識を向ける。
ちりり、と肌に微かな霊圧を感じた。
勇音は駆け出す。すぐに、二人の死神を肩に担いだ、血塗れの死神を見つけだす。
「後は、私が」
声を掛けると、急に現れた勇音に驚くことなくその死神は厳つい顔をわずかに緩めた。勇音の両腕に脱力した二体を受け渡し、死神は軽く頭を下げる。
「頼んます」
勇音は腕の中の体を見た。両方とも酷い裂傷があるが、それには軟膏が塗られていて血は止まっていた。勇音は目の前の、己も血塗れになっている死神を見る。
「あなたの血止めはまだ残ってますか」
死神は首を横に振った。勇音は片手でどうにか二体を抱えると、懐から小さな瓶を取り出す。目で促すと、死神は手を出した。分厚い手のひらは血と泥で汚れきっている。勇音は眉をひそめて、しかし確かな声で、
「血をひどく失う前に、必ず、必ず塗ってください」
と言った。死神は無言で頷くと小瓶を懐にしまった。
「あなたは、大丈夫ですか」
思わず勇音は問う。死神は岩のような顔をにやりと歪めて笑った。
「そりゃあ、更木隊っすから」
低い声でそう答えて、死神は踵を返して靄のなかに消えていく。勇音は唇を噛んでそれを見送り、すぐに意識のない二体を肩に担いで、瞬歩でそこを離れた。
廃村に潜んでいた虚の群れの、一掃作戦だった。
十一番隊の戦闘に四番隊が随伴することは珍しい。それだけ激しい戦闘が予想されるということだったのか、命じられたときの剣八は一言二言、愚痴のように文句を口にし、渋りながらも了承した。そう、勇音は卯ノ花から聞いている。
「私達は、彼らの獲物を奪うわけではありませんし」
卯ノ花は静かに語った。
「彼らの命を助ける為に随伴するわけでもないのですから。それを言われたら更木隊長も了承するでしょう」
「命を助ける為ではないなら、何の為に私達は赴くのですか」
勇音は尋ねた。卯ノ花は微かに顔を曇らせた。
「傷を治して、再び動けるようにして、再び戦いに向かわせるためですよ」
卯ノ花は揺らがない、明瞭に響く声で言った。
「覚悟なさい、勇音。今回の任務は、酷く厳しいものになるでしょう」
そう言い切った卯ノ花は、戦闘区域の向こう側で治療に当たっているはずだった。四番隊は戦闘地域を挟むように二組に分かれている。勇音は卯ノ花の霊圧を探すように一瞬だけ耳を澄ませ、振り払うように首を横に振って前を向いた。
土煙と臭気の向こうに治療に当たる四番隊の集団が見えた。
勇音は一跳びで集団を飛び越えると、中央で指示を飛ばしていた伊江村の前に降りる。伊江村は驚くこともなく、軽く礼をした。
「伊江村三席、この方達をお願いします。それぞれ背中と腹部に裂傷。血は止まっていますが意識がなく、危険な状態です。私か貴方でないと、間に合いませんが、一人で?」
「問題ありません。了解しました」
伊江村は眼鏡の位置を直すと、顔を巡らせた。
「一班、浄気結界の準備に入れ! 二人分だ。荻堂、私が両方の治療に当たるからその補助をしろ!」
「判りました」
一班がすぐに集まり、結界の準備に入る。勇音は二体をそっと、傷を上にするように横たえた。キン、と金属的な音がしてその周囲に結界が張られる。間に伊江村が入り、彼の向かいに荻堂が座った。勇音はそれを確認すると他の斑に眼を向ける。
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11月06日(火)
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