ID:104863
G*R
by K・カヲル
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■雲の向こうの遠雷が呟きさえも掻き消すから x-1
 ギンがルキアの存在を知ったのは、もう百年以上も前のことだ。

 藍染はずっと、虚の死神化について研究を続けていた。それより前に浦原は、虚の死神化、死神の虚化の双方向の変化を可能にする物質を造り出すことに成功していた。藍染は浦原のその研究に協力していたから、その顛末をギンも東仙も藍染から聞いていた。
 浦原は、その物質を破壊したということだった。
「それは、本当のことでしょうか」
 静かにそう問う東仙に対し、藍染は酷薄な笑みを浮かべて突き放すように、
「言ってはいたけどね…………はは、下手な嘘だよ」
と言った。
 ギンは薄ら笑いを浮かべて、
「藍染隊長、失敗しはるなんて、珍しいわあ」
と言った。藍染は全く笑わない眼でギンを見やり、
「仕方ないさ。あの研究はあまりに高度すぎて手を出せなかったんだよ。さすがの僕でもね」
と口元だけ笑みの形をとって言ったのだった。
 それ以来、藍染は自分の研究を影で続け、更に、浦原が崩玉を隠すだろうと思われる場所、人物などをひっそりと、けれど虱潰しに探し始めた。浦原自身はもちろん、関わりの深い人物を徹底的に調べた。ギンも東仙もまた、藍染の命じたままに秘密裏に調査をしていた。
 そんな日々が続いてもう数十年という頃だった。

 全くの偶然だった。
 急の代役でギンは、虚討伐担当として南流魂街にいた。
 そもそも護廷十三隊に所属する死神は流魂街の情勢や管理には殆ど関わることがない。ただ虚が出現したときに対応できるのは死神だけであるから、十三隊は持ち回りで流魂街での虚退治を担当していた。虚の出現や空間の歪みなどを調査するのは刑軍が行い、そのような事態が確認されて初めて、そのときの担当の隊に所属する死神が流魂街へと出ていくことになる。その日、南流魂街に虚が出現したという報告を受けたのは六番隊だった。しかし、その虚に対処できるだけの力を持った隊員が皆、不在とのことで、急遽、隣の五番隊がその任務を受けることとなった。

「白哉さんはどないしはったん」
 藍染の指示を受けた後、ギンは首を傾げてそう尋ねた。
「現世での虚の大群を相手にしているとのことだよ。そちらの状況によっては隊長も出ていかなければならないからね。彼も席を外せないらしいんだ。そして虚の力だけど……隊長・副隊長級を寄越すように斥候が報告してきたそうだ」
 窓際の椅子にゆったりと座って藍染は説明した。陽射しが眩しいのか、眼を細めて外を眺めていた。
「まあ、僕らは今、そんな忙しくはないし。どうせ君は書類仕事より外でぶらぶらする方が性に合っているだろうから引き受けてきた。頼んだよ」
「なんや、ひどう言われとるなあ、ボク」
 へらりと笑い、ギンは斬魄刀を腰に差した。藍染は振り返りもせずに、
「実際にそうじゃないか。書類仕事は僕が片付けておくよ。ああ、あと、ギン、君、一人で十分だよね、副隊長だし。他の隊員達は別の仕事をしてもらいたいから」
と言った。見えていないと判っていても、ギンはひらひらと手を振った。
「ええです、ええですわ。ボク一人で十分です。他のお人らは書類仕事が性に合うているさかい」
「まあ、そういうことだね。よろしく頼むよ」
 そこで藍染はギンを振り向いた。ゆったりと立ち上がり、柔らかく微笑む藍染は、どこから見ても人の良い真面目な隊長そのものだった。ギンは眼を細め、逆光で影になっている藍染を見た。
「どうした、ギン」
「面倒やなあ、思うただけですわ。ほな、いってきます……どこの地区ですのん」
「ああ、言ってなかったね」
 藍染が微笑んで口を開いた。
「戌吊の付近らしいよ」
「そら、また。移動で数日かかるやないの。瞬歩使うても」
 ギンは大きく溜息をついた。


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07月08日(土)
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