ID:104863
G*R
by K・カヲル
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■地上の縁からのぞき込むと深遠の青が底もなく 14
乱菊は急報を受けて斬魄刀を手にした。
もう、私達だけになっちゃったねえ。
病気で友人が死んだ次の日、空を見上げて呟いた、もう大人の女性となったかつての少女の横顔を乱菊は思い出していた。常に凛として、けれどとても寂しそうな眼をして彼女は呟いていた。
現世へと急ぎながら、乱菊は奥歯を食いしばる。その急報が自分が率いる斑に届いてよかった、と乱菊は思う。他の斑は出払っていて、自分の斑だけが待機していた。向こうに現世からの光が見えた。乱菊はひた走り、出口から飛び出して驚愕のあまり息をのんだ。
月明かりに照らされた林の中の開けた空間に、血と人体の欠片が散らばる光景がそこにはあった。
立ち竦む乱菊の背で、部下の呻く声がした。
「ま……松本四席……」
一人が震える声で乱菊に呼びかける。その声に、乱菊は我を取り戻すと、後ろに控える部下達を振り返った。それら厳めしい顔はどれも蒼白になり、眼は光を失っている。まだ潜んでいるだろう虚への怯えが、わずかに眼の奥にあった。
乱菊は息を吸い込み、ゆっくりと吐き出した。
「怯えてるんじゃないよ、あんた達。深呼吸して、そう。……いいかい、あたし達のするべきことの一つは虚退治、もう一つは生存者の捜索と救出、もう一つが……彼らを連れて帰ること」
周囲の気配に意識を向けつつ、乱菊は全員を見渡した。その顔色はまだ白いが、それでも彼らは乱菊の話を聞けているようだ。さすがに最も血の気の多い部隊に所属するだけはあり、まだ混乱はしていない。乱菊は、話を続ける。
「虚退治に関しては、この様子だとおそらく、あたし達だけでは難しいだろう。至急、上級……副隊長級以上を寄越すよう連絡して。最優先するのは生存者の捜索と救出。そして、虚の情報を少しでも聞くこと。あと、調べているときに遺体をよく観察して。少しでもどんな虚か見極めないと。いい?」
「はいっ」
「一人で離れないこと。周囲の気配を探るのを怠らないこと。そこの二人は捜索に加わらず、とにかく虚の気配を探っていて。何かあったらすぐに大声で連絡。いいね」
「はいっ」
「よし、捜索を始めて」
乱菊のかけ声に、部下達が血の海の中に散っていく。乱菊もまた最後列から、周囲に気を配りながら緋色に染まった体を調べる。耳も全身の肌も、全てを鋭敏に尖らせて気配を探りながら、一つ一つ、遺体を調べる。
沈黙がその場に降りていた。
体半分を失っている遺体は、もう半分がどこにも見あたらない。上半身だけ。下半身だけ。首から下。胸より上。頭部と左肩と左腕だけ………。切断面は潰れ、引きちぎられたというよりも何かに溶けたようにどろりとして、ゲル状になった肉が血と混じり合っている。それがどろどろと地面に広がり、月光に鈍く光っていた。
捜索にあたる全員が絶望的な顔をしていた。乱菊はまだ面影にある姿を確認できず、焦りが徐々に忍び寄っているのを感じていた。
生存者どころか、まともに体全体を残している遺体すらなかった。
「何してはるんです」
執務室に入るなり斬魄刀を腰に差す藍染を眼にして、ギンは尋ねた。ギンは先程まで急務で瀞霊廷中を走り回っていて、何が起きているのか把握していなかった。藍染はギンを振り返り、微笑んで言った。
「現世で、虚の大群に襲われた斑から救援要請があったんだよ」
「こらまた。どこの部隊です?」
藍染が微笑んだまま簡単に説明した。
「あらら。そら大事になってそうですわ」
部隊名を聞いて、ギンは敢えて笑って言う。けれど体は自然と立ち上がろうとして、ギンは意識的にゆっくりと動いた。
「その出現位置からして、おそらく、僕達の実験体が勝手に複製した大群なのではないかと思うんだよ。ちょうど僕の仕事も一段落していたし、まあさすがに死者を大量に出すわけにはいかないからね。ちょっと行って、実験結果の様子見がてら片づけてこようと思う」
藍染はそう説明すると、羽織を翻して部屋を出ていこうとしたが、斬魄刀の金属音に振り返った。
「隊長が出向きはることあらへん。ボク一人で十分ですやろ」
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06月17日(土)
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