ID:104863
G*R
by K・カヲル
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■地上の縁からのぞき込むと深遠の青が底もなく 7-1
瀞霊廷に戻ってすぐに、乱菊達は学院の応接室に呼ばれた。良い香りのする青い畳、床の間に飾られた一輪の花と掛け軸。月見窓。五人整列して正座をし、今回の事件について訊かれるのを待っていた。
ツワブキは慣れないのか、真ん中でしきりに体重を移動させて落ち着かないでいる。緊張もしているらしく、部屋を見渡しては溜息をついた。スミレとリンドウは対照的に、微動だにせず背筋を伸ばして座っていた。視線も殆ど動かさない。
ギンはかろうじて正座をしていたものの、あと一刻待たされると分かったら出ていきそうなほどに退屈しているようだった。列の端で欠伸をし、目尻に溜まった涙を拭っている。乱菊も似たようなもので、同じく列の端で欠伸を飲み込んでいた。
「ねえ、何を訊かれるのかな」
ツワブキが囁いた。スミレが少し考えるように下唇に手を当てる。
「やっぱり、虚が出現したときの様子とか、どんな虚だったとか、そういうことじゃないのかしら」
「私達、悪いことしたわけじゃないから大丈夫よ、そんな不安そうにしないでも。出迎えてくれた先生だって、誉めてくれたじゃないの」
リンドウがツワブキの背を撫でる。ツワブキは苦笑いを浮かべた。
「そうなんだけど、あたし、こういう雰囲気って苦手」
「ボクもや。ええ加減、さっさと始めてさっさと終わらせてほしいわ」
ギンが欠伸混じりに言う。その間の抜けた声にスミレが笑った。
「市丸君は時間かかるかもしれないね。どうやって虚を倒したとか色々と訊かれそう」
「止めてほしいわ。もうボク、お腹空いた」
「確かに、お腹空いたわね」
ギンの言葉に乱菊は頷き、腹に手をやった。聞き取りには偉い人が来ると教師は言っていた。音が鳴らないように、乱菊はそっと腹を押さえる。
そのとき、廊下に人の気配がした。五人は慌てて姿勢を正す。
襖が開いて、担任教師と、死神と、隊長羽織の死神が入ってきた。ギンはすっと表情を消した。
三人が乱菊達の前に座る。隊長らしき人に見覚えがあり、乱菊は眼を細めた。焦げ茶色の柔らかそうな髪。眼鏡。上背の高さ。白く映える羽織。遠い、教壇で試験管と話す姿。ずるりと約一年前の入試の日の光景が脳裏に出てきて、乱菊はギンの方を見ないように両手を強く握りしめる。
「今回のことは本当にご苦労だったね」
隊長羽織の人は柔らかい声でそう言った。眼は優しく細められ、口元には微笑みが浮かんでいる。
「僕は五番隊隊長の藍染だ。今回の実習地区は僕の部下が担当していてね、救援要請を受けてすぐに向かったらしいのだけれど、その前に君達が倒してくれたと聞いているよ。一年生だというのに、とてもよくやってくれた。虚を引き留めていたという女性陣も、虚を切り裂いたという市丸君も」
乱菊の隣で、スミレが頬を赤らめて聞き入っている。乱菊も、さすがに頬がわずかに紅潮した。一年生が護廷十三隊隊長から直々に声を掛けてもらえることがどれくらい希であるのか、誰もが重々承知している。しかし列の端で、ギンは無表情のまま微動だにしない。その隣でリンドウが様子を窺うようにそっと横目でギンを見やった。
「疲れているだろうから本当ならすぐに寮に帰してあげたいんだけどね、出現した虚について聞き取りを行わなければならないので、こうして残ってもらっている。申し訳ないけれど、もう少し頑張ってもらえるかな」
藍染はそこで言葉を切って、全員を見渡した。そしてギンのところで視線を僅かに止めて、微笑みを深くする。藍染の両脇では教師と死神が無言で控えていた。
「まず、出現の様子を話してもらいたいんだ。最初、その場にいたのは三人の女子学生と聞いているけれど」
中に座っていた三人が顔を見合わせ、リンドウが藍染に向き直り、
「私達です」
と言った。藍染が促すように頷く。
「私達が魂葬を終え、町の外れにあった広場でその確認をしていたときのことです。急に周囲の空気が重くなり、目に見える風景が揺らぎ始めました。そして広場から町へ出ていくその場所の、上……空間に、亀裂が入ったように見えました。そこから虚が滑り出るように出てきたのです」
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06月09日(金)
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