ID:104863
G*R
by K・カヲル
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■地上の縁からのぞき込むと深遠の青が底もなく 5
 休みの間、乱菊は幾度か志波邸を訪れた。
 この長期休暇が終われば、今度は冬まで簡単には外に出られない。乱菊は宿題やリンドウとの遊びの合間に空鶴を訪れ、色々と話をした。彼女は瀞霊廷や護廷十三隊のことにも詳しく、まだ何も知らない乱菊に様々なことを教えた。
 もう夏期休暇も終わろうとする、しばらく来られないだろうと乱菊が志波邸を訪れたその帰りだった。
 瀞霊廷へと向かう道を歩いていて、乱菊は自分の後ろにずっとある気配に気づいた。気のせいかと考えていたけれど、これはどうも意図的につけているようだった。乱菊は顔を顰め、足を速める。すると背後の気配も足を速めた。僅かな霊圧も感じる。その力量はたいしたものではないようだったが、その霊圧に覚えがあって乱菊はいっそう眉間の皺を深めた。
 瀞霊廷に入っても背後の人は消えず、乱菊は自分の考えが正しかったことを確信した。そして女子寮へと向かう道から外れ、林の中を別方向へ乱菊は走り出した。背後の気配も離れずに追いかけてきたことを乱菊は感知する。
 しばらく走り、乱菊は振り返った。そしてうんざりとした表情を浮かべる。
「……何かご用でしょうか、先輩方」
「気づいてたんだ。乱菊」
 息を切らせている男達に呼び捨てにされて、乱菊は不快そうに眼を細める。そして、片足を引いて、すぐに動ける体勢を取った。
 目の前には三人の男達がいた。どの顔も見覚えがある。
「先輩方に名前を呼ばれるほど親しくなった覚えはありませんが」
「冷たいこと言うなよ。俺らと仲良くしておけば、色々といいことあるぜ」
「いいことどころか」
 乱菊は吐き捨てるように言うと、あえて笑いかける。ここ一月程の彼らの言動を思い出す。乱菊だけではなくリンドウら三人にまで彼らは付きまとい、三人もまたうんざりしていた。
「ここ一月くらい、先輩方に生活を邪魔されて非常に迷惑しています。私だけではなく、友人達にも迷惑をかけるのは止めてください」
「あの子達も一緒に遊ぼうと誘っただけだろ。迷惑だなんて、流魂街出身のくせに失礼な」
 リーダー格の上級生が不機嫌に眉をつり上げて言い放つ。その言葉に乱菊もまた、片眉をぴくりと上げた。
「お前、俺らに誘われることを光栄に思わないといけないんだぞ。分かってるのか。俺らは貴族といってもそこらの貧乏貴族とは違うんだ」
「申し訳ありません、全く存じませんでした。ほら、あたし、流魂街出身ですので。そんなどうでもいいことに興味がないんです」
「はっ」
 右側の上級生が笑う。
「志波に出入りしている女が何を言う。まあどうせ、志波なんて落ちぶれた家に通っても、何もいいことなんざないけどな」
「志波様の悪口を言わないでください」
 乱菊の肩が揺れ、わずかに霊圧が漏れた。その霊圧は震え、ぴりぴりと張りつめている。
 上級生達は少しだけ怯んだが、それでもすぐに不適な笑みを浮かべた。
「いくら寮から離れたとはいえ、霊圧を解放するわけにはいかないんじゃねえの」
「説教されるだけで澄みますし、これは正当ですから」
「貴族ならともかく、流魂街出のヤツが簡単に許されるもんか。流魂街から来た奴らは乱暴で下品で、わきまえもせずに力を垂れ流す……そう言えば」
 リーダー格の男が嬉しげににやりと笑う。
「乱菊、お前の学年にいるじゃないか。試験の日に血塗れでやって来た銀髪野郎が。裏で何してるか分からないぜ。乱暴どころか犯罪者だろうよ。これだから流魂街の」
「うるさいんだけど」
 男の言葉を遮って、乱菊が冷たい声を出した。男は不満げに乱菊を見て、そして表情を凍らせる。
 乱菊は眼を細めて上級生達を見た。山吹色の髪が乱菊から発せられる霊圧でゆらゆらと揺れ始めていた。
「ぐだぐだぐだぐだ、どうでもいいこといつまでも言ってんじゃないわよ。人が黙ってりゃいい気になって。誰が乱暴で下品? 笑止千万。自分の顔と言動をよく見て言いな」
「な……っ」
 男達が言葉に詰まった。一瞬遅れて怒りが沸いたのか、三人とも顔が赤くなる。けれど、乱菊から立ち上る抑えに抑えられた霊圧はぴりぴりとその肌を焼くようだった。

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06月07日(水)
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