ID:104863
G*R
by K・カヲル
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■地上の縁からのぞき込むと深遠の青が底もなく 0
白壁の高い塔のような建物が並ぶその上に。
巨大な力の眠る柱がそびえる丘のその上に。
常に空はあった。青く高く深く、底のない巨大な空は、意識するしないにかかわらずただそこにある。全てを飲み込み、残酷なほどに淡々と流れゆく悠久の時の上に、唯一変わらないものとして。
ただ変わらぬ空。
ただ流れゆく時。
全てのものが時の流れの中にあり、その頭上には空があった。
あの子。竜胆(リンドウ)みたいやな。ほら、小さくて綺麗やないの
竜胆の花のような少女は、真っ直ぐな長い黒髪と、きれいに染めた歪んだ爪を持っていた。小首を傾けて微笑み、涙も何もかも飲み込んでいた。
なら、あとの二人は菫(スミレ)と石蕗(ツワブキ)ってところかしら
菫は分かる。かわいらしゅうて小さくて、地味なんやけどしっかり咲いとる感じやなあ
菫の花のような少女は、細い体躯で儚げにそこにいた。普段は皆より一歩下がって、静かに笑みを浮かべていた。折れそうな腕で嘆く人を抱きしめていた。
でもあの子は石蕗やのうて、薊やないの。ほら、背ぇ高うて、髪短いところとかなあ
ううん、石蕗でしょ。大きな葉に強い茎で、その上に可愛い花が沢山咲いていて、あれを見つけたとき、ほっとするもの
石蕗の花のような少女は、長い手足で、仄暗い中に浮かぶ光のように明るく笑っていた。本当は強くはないのに、涙目でその背に皆を庇うのが常だった。
そうやねえ、女の子は花のようやね
……でも乱菊が一番ようきれいに咲いとる
遠いかすかな記憶の向こう、林の中で二人微笑んで、他愛もない話をしていた。今まさに咲こうとしていた花々の話を無邪気にしていた。
それはただ穏やかだった頃に交わした言葉。
それは時の流れに溶けるように消える言葉。
残酷なまでに容赦ない流れにあの日は飲み込まれていった。
そしてどんなに気づかないふりをしていても、それは常にそこにあった。
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06月02日(金)
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