ID:104863
G*R
by K・カヲル
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■絶対的な響きをもって鐘の音は時を告げた 6
気づくと、そこは薄暗い小屋の中だった。黴くさい臭いが鼻につんとする。乱菊は後ろ手に縛られて、口には猿ぐつわをはめられていた。
目の前には男が三人いた。抑えられた霊圧を感じ、彼らが、話題になっていたその抜け死神だと乱菊は気づいた。縄を切るために霊圧を放出しようとして、乱菊は、自分の霊力が何か吸い取られているような感覚を覚えた。
戸惑う乱菊に気づいたのか、男達が振り返った。
「無駄だよ。その縄には殺気石の粉が混ぜ込んである。霊力は全て吸い取られるから、無駄に動くんじゃねえ」
「これを盗み出したから、抜けたのがすぐにばれたんだよなあ」
「仕方ねえだろ。これがあった方が人さらいが楽に出来るんだ」
男達が下卑た笑みを浮かべる。乱菊は壁際に後ずさりした。その足首に男の一人が目をやる。蛇のような視線に乱菊はぞっとする。
「少し、遊んじゃだめかい?」
「お前、土産物を食ってどうするんだ」
「別にばれやしねえよ。喋れないようにちょっと喉を切っておけばいいじゃん」
「だめだ。そんな時間もねえ。もう少しで二地区なんだ。休んだら、すぐに移動するぞ」
「またあの布きれ巻くのか。チカラ吸い取られて疲れるんだよなあ、あれ」
「仕方ねえだろ。あれのおかげで霊圧で見つからずにいられるんだから」
「……あれを盗み出したから、抜けたのがすぐにばれたんだよなあ」
「だから仕方ねえだろ。一々過ぎたことをうるせえよ」
「ちょっと囓るくらいしちゃだめかねえ」
「しつこいぞ、てめぇ。時間ねえって言ってんだろ」
怠そうな口調で、男達が話している。乱菊は耳を澄ませた。小屋の外は無音かと思うくらいに静かだ。窓は閉じられていて時間がわからないが、生き物の音もしないことを考えると、もう丑三つ時なのだろう。
男達は、もうすぐ二地区だと言っていた。乱菊は軽く絶望する。もうギンに会えないかもしれない。必死になって探しているだろうギンに、乱菊は項垂れる。それでも諦めることは嫌だった。乱菊は指を伸ばして、手首を縛る縄の結び目を探す。攣りそうになるのを堪えて、結び目を引っ掻き始めた。
抜け死神達は、押さえられた低い声でぼそぼそと話している。
「それにしても、捕まらないかねえ、俺ら」
「刑軍から逃げ切れれば大丈夫だ。あの隊長には見つかるかよ。あんな眼鏡野郎。古参の一人かどうか知らねえけど、戦いもせずにへらへら笑っているだけじゃねえか」
「やたら窮屈だしな。女も買えねえ博打もできねえ。それで給金は少ないときたもんだ。やってられっか」
「女はべらかしたいんだ、女。逃げ切れればそれができる」
「お前……はやるなよ」
「もう我慢できねえって。だから囓っていいか?」
「ガキだぞ」
「女は若い方がいいじゃんか。肌が吸い付くようで」
「俺は年増の方が好きだけどな」
「女は肌だって、肌」
「……好きにしろよ。傷はつけるなよ」
呆れたような声がして、男の一人がこちらに目を向けた。結び目を解くのに必死になっていた乱菊は、その視線に気づいて顔を上げる。男の一人が近づいてきた。その目は、やはり、ぎらぎらとした光を帯びている。乱菊は睨んだ。
「かーわいいなあ。睨んじゃって」
男が顔を寄せてくる。男の息は獣のような臭いがした。骨張った肉厚の手が、乱菊の右足首を掴み、もう片方の手が左の膝を押さえた。湿っているその手が触れる場所から、沢山の小さな虫が這い回るような感覚が広がって、乱菊は噛まされている猿ぐつわを更に噛みしめてそれに耐えた。何をされてもいい。縄を解かれれば、隙をついて逃げようと乱菊は決めていた。
「すごい綺麗だぞ、このガキの肌。こりゃあ喜ばれるぞ」
「絶対に傷をつけるなよ。痕も残すなよ」
「分かってるよ」
男の手が膝から内股に滑るように入ってきたとき、乱菊は息を止めた。気持ちが悪い。気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い。眼を閉じず、結び目を解く指は止めず、ただ歯を食いしばって乱菊は耐えていた。
男が乱菊に覆い被さるように顔を耳に寄せ、乱菊の耳朶を軽く噛んだ。湿った熱い息が耳にかかって、乱菊の体は強張った。
何の前触れもなく気配もなく、乱暴な音がして戸が破られた。
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04月04日(火)
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