ID:104863
G*R
by K・カヲル
[120054hit]
■『女性死神協会 会議中02番外編(後半)』
「失礼ね。女性死神達のために日夜働いているのよ」
「それでスピリタスがどう出てくるんやろ」
「あんた、あれくらいで酔っぱらったりしないでしょ?」
乱菊が抱えていた膝を床につき、体をギンの方に寄せる。床に座り込んでいたギンの膝の間に入る格好になると、乱菊はこつんと額をギンのそれにぶつけた。そのまま、二人とも目を合わせて微笑む。
「しぃひんけどな、喉痛くなるわ」
「あら、あんたも普通の喉をしてたのね」
「酷いわぁ」
ギンがむくれてみせると、乱菊はくすくすと笑った。ギンもむくれた顔を我慢できず、吹き出して笑う。狭い室内にじゃれあっているような笑い声が小さく響く。
「色んな隊舎からええ匂いしてたんは、他のお人らも作ってはるからやね」
乱菊はそれには答えず、ただ大きな青灰色の目をくるりと回してみせた。
「ああ、ただ四番隊は何や慌ただしゅうしてはったなあ。急患でも出たらしいわ」
「あらら、戦闘があったとは聞いてないけど」
「何やろねえ」
「ねえ」
そのまま黙り込む。沈黙も柔らかく、二人とも目を閉じた。甘い匂いが沈黙に混じり、部屋の中は普段の生活から切り離された気配に満ちていく。ギンの手は変わらず乱菊の髪で遊び、その揺れに乱菊は微笑んだ。
「なあ、乱菊」
「何」
目を閉じたまま、二人は言葉を交わす。
「これ、現世のあの習慣で使うチョコレートやろ」
「さあ?」
「その日、ボクにくれはる?」
乱菊が目を開けると、ギンも目を開けたところだった。ギンの淡い空色の眼を覗き、乱菊はゆっくりと口元を綻ばせる。
「あんたが、欲しい欲しいって駄々こねたらね」
「子供みたいに?」
「子供みたいによ」
ギンはにいと笑った。その顔から、ギンがどういうことをするかを想像して、乱菊は再び笑い出した。
(そのころの八番隊給湯室前)
「七緒ちゃーん」
京楽が声をかけると、扉の向こうで硬直する気配がした。京楽は苦笑して、扉を軽く叩く。
「七緒ちゃーん。そろそろ休まないと、起きれなくなっちゃうよ。まあ、そうしたら僕が優しく起こしてあげるけどね」
「けっ、けけ、結構です! 起きられます!」
がちゃがちゃと何かが慌ただしくぶつかり合う音がした。軽い物が床に落ちたらしい、カーン、という硬い音が扉の向こうに響く。京楽は扉に寄りかかり、優しく話しかける。
「七緒ちゃんの鬼気迫った霊圧がずっとあるから、僕、心配で眠れないよ」
「も、申し訳ありませ」
「ていうのは冗談なんだけどね。さっきまで寝てたし」
キン、と七緒の霊圧が跳ね上がり、京楽は堪えきれずに小さく笑う。
「ただね、七緒ちゃんは頑張り過ぎちゃう傾向があるからさ。もう少し力を抜いて、気楽にしなさいな。こんな明け方まで一晩中頑張らないでも。ゆっくりおやんなさい。やっていて、少しずつ上手になってきたでしょ?」
「はい……」
七緒の霊圧がしゅんと小さくなる。京楽は、心の中で可愛いなあと呟いた。
「もう、片づけて休みます。申し訳ありませんでした」
「謝るようなことじゃないんだよ」
「朝はきちんと起きますので」
七緒の声が少し沈んでいて、京楽は少しばかり考え込むように視線を天井に向ける。そしてにいと笑った。
「だーいじょーうぶ。僕がやさしーく起こしてあげるよ。お姫様を起こすのは、やっぱり、口づけかな」
「起きられますので結構です!」
急に怒気を含んだ声と霊圧に、京楽は声をあげて笑った。そしてそっと、おやすみと柔らかく囁いて扉から離れる。
←前
[5]続きを読む
02月20日(水)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ
[4]エンピツに戻る