ID:104863
G*R
by K・カヲル
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■雲の向こうの遠雷が呟きさえも掻き消すから 3-1
頭に手をやって乱暴に掻きむしると日番谷は今度は大きく息をついた。
「そんなこと言っていたら俺なんかどうすりゃいいんだよ」
浮竹は苦笑した。白哉は表情を動かさずに黙っている。ギンは浮かび上がる笑みを隠せずににやりと笑った。ルキアが入隊した当時、三番隊の隊長になっていたギンは事の詳細を知っている。
ルキア入隊の際に、白哉はルキアが席官にならないように根回しをした。それは結果、ルキアが席官にはなれない程度の実力であるのに飛び級で卒業し、入隊まで出来たのは朽木家の権力によるものだという噂を生んだ。噂はルキアを厚く取り巻いて、人を近づけさせなかった。
日番谷の場合は全く異なる。目立つこともやっかみを受けているのも同じだが、日番谷の場合は全てを実力で黙らせられる。ここでは何よりも死神としての力がものを言う。日番谷は嫉妬と同時に憧憬や羨望も、そして信頼もまた向けられている。刺すような視線を受け続けているルキアとは全く異なるところにいた。
それに。ギンは懐かしい顔を思い浮かべた。十数年前に死んだ十三番隊副隊長の事件に関わったルキアは、更に孤独になっている。
「お前も大変だろうけどな、朽木は全く別のものを向けられているんだよ」
浮竹は優しく言った。
「だから、頼みたいんだ。具体的に部下を動かさなくていいから、適当にうまいこと言って注意を払うようにしてほしい。ほんの小さな事でもいいから、報告するようにしてもらえないだろうか」
「わかった。マメに報告を寄越すように言っておく。俺はそれをどっちに伝えればいいんだ」
「浮竹の方でいい。これは十三番隊の任務でのことだ。私に関わりはない」
「お前なあ」
無表情のまま冷たく言い放った白哉に呆れたように笑うと、浮竹は欄干から離れて両手を腰に当てて軽く溜息をついた。
「そんなんじゃ何も伝わらないぞ……まあ、今言っても仕方ないな。日番谷、俺の方に頼む。市丸も、頼めるか」
浮竹に顔を向けられ、ギンはへらりと笑って片手を上げた。
「了解。担当の子にそれとなく言うておきますわ」
「すまないな。よろしく頼む。もう一方の接した地域は京楽のところだから、これから行けばいいか……これで何かわかるといいが」
そう言って浮竹は俯いて溜息をもう一度つき、そのまま咳き込み始めた。白哉は感情の見えない眼で、
「無理をして隊首会に出てくるからだ。もう帰って横になるがいい。京楽のところへは私が行く。では話が終わりなら私は行くぞ」
と言って背を向けると、躊躇も見せずに歩き出した。日番谷は白哉の背を見て、咳き込んでいる浮竹を見上げ、ギンの方に目を向けた。そして動かないまま笑っているギンを見て溜息をつくと、短い腕をいっぱいに伸ばして浮竹の背をさする。
「……や……っ……優しい、なあ、日番谷……っ、ありが……っ」
浮竹はどこかきらきら輝く眼で日番谷を見た。日番谷の眉間の皺がこれ以上はないというくらいに深くなる。
「礼はいいから、さっさと咳を止めろ」
「いや、本当に嬉し……白哉も、優しいくせに不器用で……げ……っ、げほっ」
浮竹はひときわ大きく咳き込むと、そのまま喉が裏返って出てきそうな勢いでげほげほと続けざまに咳き込んだ。日番谷が半歩だけ足を引き、しかし小さな手のひらで浮竹の背を更にさする。
「吐くなよここで吐くんじゃねえぞ。血とゲロの片付けはしたかねえぞ」
「いや……大丈夫だ、それはない…………ふう」
落ち着いたのか、曲げていた背を伸ばして浮竹は明るい笑みを日番谷に向けた。
「ありがとう、日番谷。お礼に菓子をやるよ」
「……結局あるんじゃねえか、菓子」
低い声で日番谷は呟くが、何も聞こえていないのか、浮竹はうきたった様子で懐に手を入れている。ギンは可笑しくて仕方なかったが、声だけは堪えて笑ってその様子を眺めていた。日番谷の眉間の皺はもう限界まで深く刻まれている。
「浮竹……てめえ、咳で唾だらけの手で掴んだ菓子を俺にくれる気か?」
「いやいや大丈夫大丈夫。ちゃんと包み紙にくるまれているから」
「そういう問題じゃねえ。気分の問題だ」
「気分だなんて。俺の感謝の気持ちがいっぱいに詰まってるさ」
「余計にいらねえ」
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07月07日(金)
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