ID:104863
G*R
by K・カヲル
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■絶対的な響きをもって鐘の音は時を告げた 1
「ギンちゃんもねえ。放っておいたら乱菊ちゃんがこうなるっていうことくらい、わかっているでしょうに」
「でも別に、あたし、ギンとどうこうってことじゃないのよ。ギンは関係なく、ああいう男の人って嫌。男の人自体、そんなに好きじゃないわ」
「ギンちゃんのことは好きでしょう?」
 奥方の問いに、乱菊は言葉に詰まる。そんなこと、深く突き詰めて考えたことがない。ギンはすでに乱菊の生きる世界のほとんどを占めているし、その世界そのものがギンから与えられたものだ。呼吸することを、食べることを特に何とも思わないのと同じくらいに、ギンのことも考えたことがない。
「好きって言うか、なんかもう……よくわからないわ。小さいときからずっと一緒にいるから、もう好きとか嫌いとか、わからないのよ。あの男の人達が言うような、恋とか愛とか、そんなのじゃないと思うけど、だからといって家族みたいな感じもしないの……家族を知らないから、わからないけど」
 考えながら言葉にしてみるが、言葉にするはしからどんどん真実から離れていくような気がする。ギンと乱菊の間に流れているものを言葉にするのは難しい。全てが含まれているようで、全てがないようで、乱菊はただ、ギンの後ろ姿を思い出して体の奥がぎゅっと痛むのを感じる。

 この痛みの名前を、乱菊は知らない。

「乱菊ちゃんとギンちゃんが一緒にいるところを見たときには、なんだか夫婦みたいだなと思ったりもしたけど、夫婦ともちょっと違うのよね」
「だって、奥さんだって旦那さんと恋をして夫婦になったんでしょう。あたしとギンの間にはそんなのなかったもの」
「そうねえ。あの人とあたしの間には恋はあったような気がするわねえ」
「あたしとギンは何でもないのよ。それに、もうギンは戻ってこないかもしれないんだし。ただ、あの男の人達が言うような恋なんてしなくていいわ。ああいうのが恋なら、あたしは恋を知らなくていい」
 言い切る乱菊に、奥方は微笑んだ。




目次

03月03日(金)
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