ID:104863
G*R
by K・カヲル
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■ぼくらはただそうやって世界を手にした 5
 逃げようとするギンの腰にしがみつく。乱菊は早く抱きしめて欲しかった。この震えを押さえ込んで欲しかった。血なんて、何とも思っていないことを伝えたかった。
 だってこの血の半分はあたしが浴びるものなんだもの。
 しがみつく乱菊の肩が細かく震えていることに気づくと、ギンは跪いて乱菊をそっと抱きしめた。乱菊の匂いがする。血の臭いがふっと周りから消えて、優しい匂いがギンの緊張を解いた。
「汚れるで、乱菊」
「それが何だって言うのよ……ごめんなさい。ごめんなさい。あたしが弱くて、ごめんなさい……」
「ボク、怖いやろ」
「何言ってるのよ」
 乱菊が顔を上げた。まっすぐな、濡れた眼がギンを見上げている。そこに怖れはなかった。ただ、悲痛な色に濡れている。
「どうしてギンを怖がるの?」
「ボク、人潰してるで。血塗れやって」
「アンタがもう少し遅かったら、あたしが殺していたわ。あんたが浴びた血は、本当ならあたしが浴びるものよ……ごめんなさい、ギン。あんたにこんなことを、全部させて」
 乱菊の眼から涙がこぼれだした。乱菊が顔をギンの胸に埋めようとするので、ギンは乱菊の頭を抱え込むように抱きしめる。乱菊は細かく震えながら
「怖かったのは、あの連中よ。ぎらぎらしている、あの眼が怖かったの」
とくぐもった声で言った。ギンは何も言わず白く浮かび上がる肩に着物を戻し、そっとそっと抱きしめなおした。一人でいた頃の乱菊の話を聞いていたギンには、どんなに危険な状況になってもきっと乱菊はできるだけ殺さないように……おのれはひどく傷ついても相手を殺さないようにするだろうことがわかっていた。やっぱり乱菊は綺麗な子や、汚したらあかんわ、と口の中で呟いた。




目次

01月10日(月)
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