ID:104863
G*R
by K・カヲル
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■『女性死神協会 会議中02番外編3 後編』
 前の机には処理済みの書類も未処理の書類も山積みになっている。乱菊の前には湯飲みと菓子の入った浅籠が置かれているが、書類を手にしていることから一応仕事をしていたらしい。日番谷は眉間に皺を寄せたものの、何も言わずに乱菊の向かいに座る。
「松本。訊きたいことがある」
 乱菊がきょとんとした。
「はい、なんでしょうか」
「技術局が作った媚薬入りのチョコ、俺には食わせてないだろうな?」
 日番谷は一挙手一投足を逃さないように睨みつけて言う。乱菊が破顔一笑した。
「ふふ、なぁに仰ってるんですか、隊長! あたしが……ていうか、みんな隊長にそんなの飲ませるはずないじゃないですか」
「そうか」
 日番谷がほっとして息を吐く。乱菊は艶やかににっこりと微笑んだ。
「そうですよぅ。当たり前じゃないですか。隊長の初めて物語第一章をそんな方法で始めちゃおうだなんてあまりに哀れで誰も思ってな」
「てめえ、減給するぞ」
 凄む日番谷を気にもとめずに乱菊は笑う。
「冗談ですよ。媚薬は、快諾してくれそうな隊長にしかお願いしていないんです」
「京楽は確かにそんなことを言っていたが、藍染は何も知らされずに食ったって言っていたぞ」
 先程の会話を思い出して日番谷は遠い眼をする。乱菊は笑顔で頷いた。
「藍染隊長はそうです。あとはお願いして。お二人の他に飲んで頂いたのは東仙隊長と更木隊長ですね」
「え、更木の野郎は怒るんじゃねえの」
「やちるが頼みましたから」
 しれっと言い切った乱菊を見て、日番谷は背筋が寒くなるのを覚えた。怖ぇ、女って怖ぇ、と小さく呟く。
「とにかく、藍染隊長以外はちゃんとお願いして飲んで頂いているんです。技術局で安全性は確認されていましたし、確かめたかったのは隊長格でも効き目があるかどうかだったので。まあ男性死神を目の前に置いといて一口ごくりと」
 乱菊は淡々と怖ろしいことを説明する。
「ちなみに、男性を目の前に置いておくのはまあその、効き目があったときに女性だと問題に発展しかねないという配慮でですね」
「いい、それは判るからそれ以上聞きたくねえ」
 男だと別方向でかなりの問題に発展するだろうというツッコミをどうにか飲み込み、日番谷は説明を遮った。
「で、どうして藍染だけだまされたんだ?」
 その問いに乱菊は完璧な、心情を何も窺えない笑みを日番谷に向けた。
「……隊長…………がんばれっ」
「それはどういう意味だてめえ」
「あたしの口からこれ以上は言えませんよぅ」
 日番谷の霊圧がガンと跳ね上がるが、乱菊はその霊圧の中で艶やかに微笑んでいる。
「…………言っておくが俺は別に何も気にしてねえぞ」
「承知してますよー」
 乱菊はくすくす笑っていて、日番谷は憮然としてそっぽを向いた。その横顔を眺めて乱菊は柔らかく眼を細め、
「……雛森の最近お気に入りの店は『シェ・ツブラギ』っていうところですよ」
と言った。日番谷は黙り込んでいたが、小さく、
「……おう」
と答える。
「ここの席官達は多分、『四十万堂』の最中を喜ぶと思います。あっちの部屋で話題になってましたから」
「おう」
「あたしは何でも、隊長が選んでくださったものは本当に嬉しいですけど」
「…………」
 日番谷はちらりと眼を向けた。
「もし隊長が選ぶのにお困りになってしまうようでしたら、美味しい日本酒が嬉しいですね」
 そう言って乱菊は小さく、ふふ、と笑った。小首を傾げたその様子を日番谷は何も言わずに眺めて、そしてまたそっぽを向いて、
「おう」
とだけ言った。





 あとがき後半戦です。市丸さんは、女性陣に意見を聞くようなふりをして乱菊さんに「何が欲しい?」と訊いています。やちるちゃんにも訊いていますが、彼女は事情をそこはかとなく感じ取っているので乱菊さんと一緒に「『瀞霊廷東門前の石畳』がいいー」と言ってくれています。皆と同じで特別扱いしていない、けどこっそり特別、というのがいいなあと。うまく文章で出来ているかは別として。

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02月24日(日)
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