ID:104863
G*R
by K・カヲル
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■0929
檜佐木が吉良の肩を乱暴に抱えて、何かを耳元で囁いている。それに吉良が大きく反応し、何か小声で言うのを大前田が笑って、そしてそのまま部屋を出ていった。
「……大丈夫ですかね」
雛森がそれを見送って、呟いた。乱菊は煎餅を半分に折りながら、笑って答える。
「ま、平気でしょ。雛森、半分食べる? あたし、一度あいつの煎餅食べてみたかったのよね」
「あ、私も食べてみたかったんです。いただきます」
雛森に半分を渡すと、乱菊はそれを口にくわえて資料を抱えて立ち上がる。もう部屋には乱菊と雛森しか残っていない。煎餅を噛み砕く音が響いた。
「あ、おいし」
「おいしいですね、これ」
三口くらいで食べ終えて、感想を述べながら二人は扉に向かった。
扉の向こうに微かに気配がした。
乱菊は一瞬だけ動きを止めて目を瞑った。そして目を開けて、雛森が開けた扉の向こうを見る。
ギンが欄干に腰掛けて、笑っていた。
「あ……市丸隊長! 吉良君がずっと探していたみたいですよ」
雛森が軽く抗議をするが、ギンはいつものようにへらりと笑うだけだ。
「いややなあ、五番隊副隊長さん。ボクが仕事しぃひんみたいやないの」
「実際に吉良君が困っています」
「大丈夫やて。ホントに切羽詰まっとるモンは全部終わらせてるさかい」
ギンはひらひらと手を振って雛森の抗議を受け流す。そしてちらりと乱菊を見た。乱菊は微笑みとも言えないくらいの笑みを口元に浮かべる。
「それにしても、君らどこか行くんやないの。やちるちゃんが昼間、会議の後にお祝いにお菓子食べる言うてはったけどなあ」
ギンの言葉に雛森が顔を和らげた。
「あ、あの、今日は乱菊さんのお誕生日なので、みんなでお祝いするんですよ」
「ああ、なるほど。やちるちゃんが言うてはったのはそれやねんな」
ギンがにやりと笑い、しらじらと言う。その顔を見て、乱菊は軽く溜息をついた。ギンは軽い笑みのまま、乱菊を見つめた。
「おめでとさん、十番隊副隊長さん」
「ありがとうございます。市丸隊長」
乱菊は軽く一礼する。ギンは袖に手を入れて何やら探していたが、ただ白い和紙に包まれた小さな包みを取り出した。
「なら、これ。えいひれやねん」
手渡され、乱菊は完璧な笑みを浮かべる。
「先日のお話のものですね」
「これ食べはったら他のえいひれ食べられへんよ。ほんまに。心して食べ」
雛森が乱菊の手元を覗き込み、
「女性に贈る物でもないですよね……」
と小さく呟いた。ギンがおかしそうに笑って、
「ならこれも付けておくわ」
ともう一つの包みを取り出した。その中を覗いて、乱菊は自分の中がしんとしたのを感じた。ギンが柔らかい眼をして乱菊を見ている。
「干した無花果とか柿やねん。つまみにもなるけど、まあ、お菓子やし。……最近はあまり食べへんもんやさかい、懐かしいやろ」
「……ありがとうございます」
乱菊は深い響きの声で答え、大事にそれを懐にしまった。そして自分の袖から一つの、今日一日、ずっと持ち歩いて渡す機会を探していた包みを取り出す。
「あたしも最近、懐かしくなって食べていたんですよ。同じ店かもしれませんが、よろしかったら、どうぞ」
「おおきに」
それを受け取り、ギンもまた丁寧な手つきで懐にしまう。そして穏やかな眼をして、乱菊を見つめ、すぐに軽い笑みを浮かべた。
「もう行ったほうがええんちゃうの? 他のお人ら待たせてまうで。さっき、七番隊副隊長さんと十二番隊副隊長さん、楽しげに歩いてはったしなあ」
「あ、そうですよ乱菊さん、急がなきゃ」
雛森が慌てたように乱菊の袖を引く。乱菊は微笑んだ。
「そうね。では、市丸隊長、失礼致します」
「失礼します」
二人並んで礼をすると、ギンはひらひらと手を振って背を向け、反対方向へゆっくりと歩いていった。乱菊は雛森と急ぎ足で自分の隊舎へと向かう。
「乱菊さん、干した果物お好きなんですか?」
焦ったように前のめりで歩きながら、雛森が訊いてきた。乱菊は少しだけ考えて、答える。
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01月12日(土)
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