ID:104863
G*R
by K・カヲル
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■雲の向こうの遠雷が呟きさえも掻き消すから 3-1
警戒していたのか足を止めていた日番谷だったが、浮竹の言葉に顔を上げるとゆっくりと近づいてきた。浮竹が欄干に深く寄りかかり目線を下げたことに気づいてギンはひっそりと笑った。屈まないだけ日番谷に気遣っているのだろうが、それでもそれは無意識で悪気のない、しかしあからさまな行為で、やはり日番谷は眉間の皺を更に深くしている。自分の腰辺りにある白髪の頭を見下ろして、ギンは笑いを堪えた。
「市丸……笑ってんじゃねえぞ」
「いややなあ、十番隊長さん。ボクが何を笑うんやろ」
「うるせえ。で、浮竹。何だよ」
二人を見比べてきょとんとしていた浮竹は、日番谷に言われて顔を引き締めた。
「いや、十番隊の担当地区に空座町と隣接しているのがあっただろう」
「空座町? ……ああ、あったな、そんな場所。で?」
「いや、空座町の担当が俺の部下なんだが、ちょっと連絡が取れていないんだ。何か報告が入っているかと思ってな」
日番谷は眉を寄せたまま上を見るようにしてしばらく考えていたが、やがて浮竹を真っ直ぐに見上げた。
「ない。特別気になるような報告は入っていない。ただ、別に気にすることねえだろ。何か怪我をしたとかじゃねえ限り、一々連絡しないんじゃねえのか」
日番谷の言葉は確かに尤もだった。現世に滞在する死神の居所、周辺の虚情報は全て瀞霊廷で捕捉している。ゆえに、よほどのことがない限りは、担当者は細かい報告は行わずに全てを一任され、自分の考えで行動することが許されている。
しかし、浮竹は首を横に振った。白哉もまた、小さく息を吐いて、
「しかし、今回はそうではない」
とはっきりとした声で言った。日番谷が白哉を見上げた。浮竹もまた白哉に目をやり、白哉が頷くのを見て口を開く。
「朽木の場合、任期が終わっているのに連絡がないし、何より居場所がこちらで把握できていない。現世にいる死神の居場所を把握できないなどありえない。通常の状態ならば霊圧が捕捉できるし、何らかの原因で霊圧が弱まっているとしても、義骸に入っているならば必ず捕捉できる。そうすると考えられるのは何か酷く体調を崩して力を失っているにもかかわらず、義骸に入ることすらできていないということだ。確かに、技術局に保管されている朽木の義骸はそのままで、義骸請求の連絡も入っていない。そしてそういった状況なのに、朽木からは全く連絡がないんだ。あいつの性格からは、そんなことは考えられない。まず、任期が終わっている時点で連絡が来るはずなんだ」
浮竹も、普段と表情がそう変わらずにみえる白哉も酷く真面目な眼をしていた。ギンはそれを薄笑いを浮かべて眺めている。一言も口を挟まず、ただ無言でいたが、ギンは胸の中で諦めの溜息を何度もついた。
藍染が戌吊に出向いていたことは、ただ崩壊の始まりが延期されただけのことだった。藍染は戌吊でルキアの存在に気付くだろう。そしてこの状況を藍染が耳にするのもそう遠くはない。そうしたら藍染が百数十年前の全容を理解することをギンは確信していた。
建物の向こう側で人のざわめきが遠く聞こえる。しかし四人の間にはただ温い風が吹いた。
日番谷は腕組みをしたまま難しい顔をして浮竹の話をじっと聞いていたが、話が一区切りついたところで小さく息を吐いた。
「俺の部下に様子を見に行かせるか? そうしたら、隣接した地区の担当者にすぐに伝える」
「いや、それには及ばぬ」
白哉は低い声で答えた。そして目を伏せると、
「兄の厚意には感謝するが」
と付け加えた。浮竹は白哉に柔らかな眼を向けて、そして日番谷を見た。
「……朽木は本当に目立つ奴なんだ。立場も、入隊した経緯も何もかも、注目を浴びるしやっかみも受ける。そして現状では表だって探すことは難しい。空座町での虚はちゃんと退治されているし、その事実をこちらは確認している。そこに死神がいないはずはない状況なんだ。それをただ、朽木から連絡がないから、というだけで探しに行くと朽木を取り巻く環境がこれまでより悪くなってしまう。朽木家の令嬢だから甘やかされている、などと、な。……それは、あいつのためにも避けてやりたいし、朽木家にとっても避けなければならないんだ」
「……貴族ってのは、面倒くせえなあ」
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07月07日(金)
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