ID:104863
G*R
by K・カヲル
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■地上の縁からのぞき込むと深遠の青が底もなく 7-1
 リンドウが珍しく驚いた声を出した。乱菊は声を飲み込んで、ただ目を見張る。そして俯くと、横目でギンを睨んだ。ギンはその視線に気づいているだろうに、飄々と前を、藍染の方を向いている。
 藍染はかすかに声を出して笑った。
「おやおや、入試の時にあれほど期待していたのに。勉学に励むならそうしてほしいものだがね」
 その言葉にリンドウが声を上げた。

「どうしたんだい」
「あ、あの、もしかして」
 藍染に尋ねられ、リンドウは視線を彷徨わせて、そしてギンを見た。
「私達の入試の時に、途中で市丸君を連れてきた方は、藍染隊長ではありませんか」
 ギンが表情を消して笑みだけを残した。
「覚えてはるんか」
「覚えているわ。良くも悪くもあれほど印象的だった人はいないもの」
 ギンを振り返ってリンドウは言い、再び藍染の方を向く。藍染は鷹揚に頷いた。
「そうだよ。ちょっと僕の隊の任務に巻き込んでしまってね。入試に遅れてしまったから、お詫びがてらに送ったんだよ。これほどの能力を放っておくのも勿体ないということもあったけれど」
「……すごい……その頃から認められてたんだ」
 ツワブキが呟いた。リンドウは両頬を手で押さえる。その頬は少し紅潮しているようだった。
 乱菊はそのやりとりをただ眺めていた。乱菊は何一つ、訊くことはできなかったし、するつもりもなかった。何があったのか、どんなに詳しく訊いたとしても、ギンの言動の理由を知ることはできないし、真意を知ることもできないことを乱菊はよく分かっている。一年前のあの夜、ギンが話したことが全てだった。納得したわけでは決してないが、いつか知ることができるだろうと乱菊は自分に言い聞かせていたし、長いつきあいからくる経験上、半ば諦めていた。
 隣でスミレが顔を上げた。そしてギンを見つめる。
「なら、市丸君、他の人達にあんな風に言われることは理不尽ではないの」
 その問いに藍染が問い返す。
「あんな風とは、どんなことなのかな」
「市丸君が、入試の時に血だらけで現れたことで、皆、少し怖がっているところがあるんです。私達も最初は少しそうだったんですけど」
「当然や」
 ギンがスミレの言葉を遮った。
「あの血は巻き込まれただけでついたわけやない。ボクが人を斬って浴びた返り血や」
 そのギンの言葉に被せるように藍染が言う。
「しかし君は運悪く巻き込まれただけだ。別にその事実を僕は咎めてもいないし、本当に仕方のない結果だったと思っているよ」
 藍染は途中からスミレ達に言い聞かせるように優しく話した。乱菊はそっとギンを見て、小さく息を吐いた。ギンが咎められたわけではないことを知って、それだけでも乱菊はほっとしていた。
 スミレはわずかに顔を強張らせていたが、それでもギンに向かって微笑んだ。
「でもね、市丸君。当然でも何でも、それでも私、お友達でいたいと思うのは変わらないのよ。市丸君は今日みたいに、助けに来てくれるような優しい人ですもの」
「そうよ。本当にそうなの、市丸君。それに私、酷い場所で暮らしていたから、それくらい何でもないわ」
 けろりとした顔でリンドウが言う。隣でツワブキが頷いた。
「友人に恵まれたようだね」
 藍染がおかしそうに笑った。
「ならば余計にきっちり学んでくれないと」
「学ぶもんは学んでますわ。留年せんように、こうしてちゃあんと実習で人の倍は魂葬しとりますしなあ」
「実習だけでどうにかしようとするんじゃない。生活態度から改めろ」
 苦虫を噛み潰したような顔をして教師が言った。ギンは小さく礼をして、はあと呟いた。
「市丸君、一緒に進級しましょうよ。寂しいよ」
 リンドウが心配そうな声を出した。その言葉にツワブキもスミレも首を縦に振る。ギンはわずかににやりと笑い、彼女達に微笑んだ。
「別嬪さん方に言われると嬉しいなあ。大丈夫やて、なあ、センセイ」
「お前だけ試験があるけどな。もう決定事項だ」
「はぁ? それ初耳ですわ」
「今、初めて言った。明日、朝一でお前だけ試験する」
「明日は休みですやん!」
「逃げるなよ。受けないと絶対に留年させる」

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06月09日(金)
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