ID:104863
G*R
by K・カヲル
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■0929
少しずつ部屋から人が出ていく。雛森が資料を抱えて乱菊の方に近づいてきた。その顔には笑みが浮かび、嬉しそうに見える。
「乱菊さん、行きましょうよ」
「うん、そうしよっか」
「どこか行くのか」
檜佐木の問いに、雛森は笑みで答える。
「乱菊さんの誕生日のお祝いに、数人でお菓子を食べに行くんです。檜佐木先輩もご一緒にいかがですか」
雛森の何の疑問もない誘いに、檜佐木は片肘を机について頬杖をつくと、盛大に息を吐いた。
「俺、今深刻な病気で行かれねえ」
「えっ、どうされたんですか」
「金欠病」
「……あー…………」
檜佐木の答えに雛森は苦笑いを浮かべた。乱菊はつい笑い声をあげる。扉の方から伊勢と虎徹が、
「先に戻ってますよ。待ち合わせ場所に遅れないでくださいね」
と声を掛けてきた。後ろではネムが無表情で立ってこちらを見ている。雛森と乱菊は頷いて手を振ると、二人はひらひらと手を振って答えて、出ていった。ネムは一礼して、彼女達についていく。
「やちるちゃんは?」
「もう眠くて限界だったっポイから、帰ったわ」
「予定より遅くなりましたからねえ。夕食の時間にしても遅いですよね」
雛森が壁に掛けられた時計を見上げ、つられて見上げた乱菊はそっと袖の中のものに手を伸ばす。
今日は忙しく、会議まで乱菊はずっと瀞霊廷内を飛び回っていた。少しの時間も作れず、こういうときに限ってどこかふらふらしているはずの姿も見つからない。そしてもうこれから女性達と出かけてしまう。
今年は十日に会えただけでも良しとするか。
乱菊は軽く溜息をついた。
その背後で更に大きい溜息がした。
「どうしたんだ、吉良」
檜佐木の問いかけに、背後にいた吉良が情けない顔をする。その横では大前田が普段通りの尊大な表情で立っていた。
「おう、庶民。今夜の飯、ちょっと待てるか」
「……貧乏人よりかはマシですけど、できれば名前で呼んでもらえませんかね。で、どうしたんです」
「こいつに訊け」
大前田が吉良に顎をしゃくり、吉良は項垂れてまた溜息をつく。
「数日前に行われた例の集計って、僕がまとめることになっていたじゃないですか」
吉良の話に三人が頷いた。
「今日、隊長が全然、ぜんっぜん隊舎にお戻りにならなくて、あ、ご自分の今日の仕事は全て終わらせていらしたんですけど、でも急に入ってくるものも今日は多くて。で、仕事したり探したりしていたら、集計に手を付けられなくて、でもまだ締め切りは先だからと思っていたら、今日の会議で締め切りは明日になるし」
「で、別に隊の仕事じゃなくて俺ら共通の仕事だしな。こいつが隣で貧相な面で溜息ばかりついてるから、仕方ねえから手伝うことにしたんだよ……ったく、面倒くせえ」
「すみません」
疲れ切って小さくなっている吉良に、大前田はにやりと笑う。
「まあ仕方ねえだろ。とりあえず俺様に感謝しておけよ」
雛森は心配そうに吉良を眺めて、少し悩んだように目線を動かすと、頷いた。
「私も手伝うよ、吉良君。乱菊さん、申し訳ないんですけど」
雛森が眉を八の字に寄せて振り向くと、乱菊が口を開ける前に檜佐木が手をひらひら振った。
「あー、俺が手伝うんでお二人はさっさとお祝いに行ってくださいって」
吉良が首を傾げた。
「お祝いって?」
「今日、乱菊さんの誕生日で、女の子達でお祝いするんだと」
「え、あ、おめでとうございます松本さん。いいですいいです、僕の責任なんだから、ほら、雛森君、いいから行ってきて」
吉良は両手を振って焦ったように言う。雛森と乱菊は顔を見合わせた。
「でも、大丈夫?」
「大丈夫。ごめんよ」
気遣わしげに尋ねる雛森に、吉良は少しだけ嬉しそうに頬を染めて答える。その吉良の背を叩いて、檜佐木が椅子から立ち上がった。
「ほれ、でれでれしてねぇで、行くぞ」
「は、はい、ありがとうございます」
「じゃ、俺らはこれで。松本さん、おめでとうございます。これ、食います?」
大前田が差し出した袋に手を入れて、乱菊は一枚、煎餅を取り出した。
「ありがと。一枚もらうわね」
「じゃ、乱菊さん達、失礼します」
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01月12日(土)
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