ID:104863
G*R
by K・カヲル
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■23 大バサミ
 肩を下げて浦原は、たははと笑ってテッサイを見上げた。背中に物差しでも入れているのかと思うほどに背筋を伸ばして正座をしているテッサイは、顔だけを浦原に向けて、頷く。
「ホント、自分の蒔いた種から芽が出たんですから、自分で刈り取らないとっスよねえ」
 溜息をついて、口を閉じると室内はしんと静まりかえった。部屋の周囲にも誰の気配もなく、ただ遠くで犬の鳴く声がかすかに響いているのが聞こえる。浦原は畳の目にふいに眼を向けた。その目の隙間に爪を差し込み、くいと押し込む。ぴん、と爪が弾かれる小さな音がした。
「……テッサイ」
「はい」
 畳に眼を向けたまま、浦原は落ち着いた声で話す。
「出てきた芽はとてつもなく危険なもので、咲く花はまた、どうにも危険な人を呼び寄せるようっスよ」
「そうですな」
 テッサイの声色には何の変化もなく、テッサイは淡々と浦原に答えて、一口、茶をすする。
「芽を刈り取るのもかなりしんどいことになりそうっスね」
 浦原は、爪で畳の目をなぞりつつ、眼は遠くを見ていた。
「そうでしょうな」
 テッサイは温い茶を気にすることなく、もう一口、すする。
「藍染サンとは、最初、分かり合えると考えてました。おそらく藍染サンもそう考えていたでしょうね。お互い、自分の倦怠にも世界に溜まる膿にもうんざりしていたはずですから。ただ」
 ぴん、と爪が弾かれる。
「アタシは別に、この世界が嫌いなわけじゃないんスよ」
 かかか、と爪が畳を引っ掻いた。
「別に、あそこまで危険なものを欲しいとは思わないんスよ」
 引っ掻く音がかかかかと続く。
「あれを手に入れて、どうしたいんですかねえ……藍染サンは」
「さあ……どうされたいのでしょうな」
 テッサイはそう答えると、すっと浦原の方へ体を向けた。浦原は顔を上げてテッサイを見上げる。テッサイは両手を軽く握った形で膝の上に置き、背筋は伸ばしたまま、浦原を真正面から捉えた。
「喜助様。藍染殿がこちらを探っておられる、そのことは確実です。目的が隠された崩玉であることも確かでしょう。藍染殿と喜助様が敵対することも……それが表に出ることはないでしょうが、確実に避けられないでしょうな」
「そうっスね」
 テッサイは小さく笑った。
「藍染殿には、おそらく協力者もおるでしょう。しかし、喜助様。貴方には私と夜一様がおりますぞ。尸魂界でも並ぶ者のない最強の女神と万能の部下をお忘れになっておられませんかな」
 浦原は少しばかりきょとんと、彼には珍しい顔をしてみせた。そしてすぐに相好を崩し、ふふふと声まで上げる。
「テッサイ……自分のことを万能だなんて言う人もなかなかいないっスよ」
「私は自負しておりますぞ」
 自信満々にそう言い切り、テッサイは柔らかい視線を向ける。浦原は笑みをにやりと、人を食ったようなものにして更に笑った。
「いや、アタシもそう思ってますけどね」
 顔を見合わせて二人で忍び笑いで笑う。小さな部屋にくつくつと笑い声が響く。浦原は笑みを残したまま、
「そうですよねえ、女神までついているんですしねえ……アタシらには」
と呟く。そして思い出したようにテッサイを振り向いた。
「知ってますか。現世の、別の国の話ですけどね……運命を司るのは三人の姉妹の女神で、それぞれが運命の糸を紡ぎ、長さを決め、それ断ち切るそうスよ」
「ほう、運命の女神ですか……確かに、夜一様は喜助様の運命の女神でしょうな」
 浦原はへらりと笑う。
「アタシらの運命はどうなんでしょう。アタシと藍染サン、どちらが先に断ち切られるのか、それともアタシらが世界の運命の糸を握っているのか……アタシらの運命の女神様は、糸なんて紡げないし、鋏なんてモンじゃなくて手刀で糸をぶった切りそうですけどね」
 テッサイもはははと快活に笑った。
「鬼道でぶっ飛ばして下さるかもしれませんな」
「これを聞かれたらアタシらがぶっ飛ばされるっスねえ」
 浦原は柔らかい顔で呟いた。








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11月23日(金)
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