ID:104863
G*R
by K・カヲル
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■07 侵入者
 手をそのままにギンは椅子から立ち上がり、寝台に腰掛ける。そうしてもう一方の手も乱菊の頬に伸ばし、両手で包みこんだ。乱菊は目を瞑ったまま、柔らかに笑う。そっと額を寄せて、額とつける。目の前が山吹色に染まる。
 乱菊の息がかかる。それは温かく、ギンはほっとする。

 ぴくんと、反射的に体が反応した。
 ギンが顔を上げる。乱菊も目をあけた。目を合わせ、苦笑する。

 扉が開けられて、雛森が顔を覗かせた。
「乱菊さん、大丈夫ですか……あ」
 雛森が困った顔をした。その上から覗き込んできた吉良が、情けない顔をする。
「……市丸隊長…………」
「なんや、イヅル。来られるやないの。せっかくボク、隊を代表して見舞いに来たのになあ」
 市丸は丸椅子に腰かけたまま、へらりと笑って手を振ってみせる。その横で乱菊が溜息をついた。
 雛森と吉良が入ってきた。雛森は菓子折りらしき箱を手に持っていたが、吉良は花束を持っている。
「入口の来訪者名簿に市丸隊長のお名前がなかったから、まだいらしてないんだと思って花を買ってきたんですけど」
「市丸隊長は窓からお越しになったわよ」
 恨めしそうに吉良はギンを見て、大きく溜息をつく。
「市丸隊長、私へのお見舞いを仕事をさぼる口実に使っていませんか」
「酷い言われようやねえ」
 副隊長の顔をした乱菊に言われて、ギンはへらりへらりと笑う。普段通りに、薄く、軽く。
「あまり吉良君を困らせたらだめですよ、市丸隊長」
「そうですよ、市丸隊長」
 雛森と乱菊に続けざまに言われて、ギンは立ち上がる。
「あらあら、怒られてもうたなあ。ならそろそろ仕事に戻るわ」
 窓枠に足をかけて、ギンは振り返る。
「お大事になあ」
「ありがとうございます。市丸隊長」
 慌てる吉良と雛森を背に、乱菊は微笑んでいた。昔のような、柔らかな顔で。
 ギンは顔を綻ばせてしまう前に顔を背けて、ただ手をひらひらと振ると、瞬歩で窓から飛び出した。






 ある日の出来事。
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11月07日(水)
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