ID:104863
G*R
by K・カヲル
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■雲の向こうの遠雷が呟きさえも掻き消すから 6-1
日番谷と顔を見合わせて、お互いに頷く。遠くから、終業の時刻を報せる鐘が響き始める。その音に導かれるように乱菊は再び窓の外に顔を向けた。空は先程より赤く暗くなり、遠く向こうの雲はやけに紅く染まっていた。
執務室の扉を叩く硬い音がした。
乱菊が振り返ると、日番谷と眼があった。日番谷が、
「おう、入れ」
と応える。
「失礼致します……」
開く扉から勇音が顔を覗かせた。背の高い体を縮めるようにして、困った表情で静かな執務室に入ってくる。乱菊は笑って、
「あら、勇音、どうしたの」
と迎え入れた。勇音がほっとしたような顔になった。
「あの、こちらが先日の健康診断で再検査になった人達の結果です。こちらの隊には深刻な状態の人はいなかったので私共から申し上げることはありません。日番谷隊長が目を通されたらご本人達にお渡し下さい」
手渡された封筒を、乱菊はひらひらと日番谷に振ってみせる。日番谷は勇音を見上げると、
「判った。ご苦労だった」
と言った。勇音が一礼する。乱菊は茶菓子の入った箱の中を確認し、勇音に笑みを向けた。
「もう終業時だし、もう配り終えたならお茶でも飲んでいかない?」
乱菊の言葉に勇音は眉を寄せて首を傾げた。
「ごめんなさい。まだ最後に十一番隊を残してあるんです。再々検査の人が多いから、一人一人に説明していかないといけなくて」
「大変ねえ……副隊長自ら」
「だって、伊江村さんが言っても聞いてくれないらしいから」
困ったように笑う勇音の肩を乱菊は労うように軽く叩く。そしてひょいと顔を上げ、
「そういえば、勇音は聞いた? 朽木が見つかったって」
と尋ねた。その途端、勇音の表情が曇る。日番谷がちらりと視線を向けた。
「……十三番隊で聞きました。あちらには他の隊より少し早めにその報告が届いたはずですから」
「そう……迎えに行くのは十三番隊かしら」
乱菊は俯く勇音を覗き込むように見上げて訊いた。勇音は眼を伏せて、逡巡するように視線を泳がせる。分厚い封筒を胸の前で抱える両手が、強く握られた。
「いいえ……まだ決まっていないそうです。浮竹隊長も、小椿君や清音も自分達で迎えにいくつもりでいるようですが、中央四十六室が決めることですから、まだどうにも」
勇音の言葉に乱菊は首を傾げる。
「だって……十三番隊が行くのが普通なんじゃないの? 確かに、無断で滞在期限延長したことになるから罪は問われるでしょうけど、でもそんな重い罪じゃないでしょ」
「いいえ。話はそれだけではないそうなんです」
勇音ははっきりと言い、目を上げて乱菊を真っ直ぐに見た。そして日番谷の方に振り向く。日番谷は促すように小さく頷く。
「いずれ知れ渡ることなので申し上げますが……朽木さんが義骸に入った状態で発見されたことは伝えられていると思います。そして技術局の保管庫の方に義骸要請はなかったこともご存じでしょうか」
「ええ、知ってるわ」
乱菊は低く相づちを打った。
「朽木さんが入っていた義骸は、一目では義骸とは判別できないくらいに精巧なものだそうです。映像で見た限り、ではあるそうですが、義骸を見慣れている技術局の方々ですら最初は判らなかったくらいに。その義骸を直接調べなければ詳細は判らないでしょうが、少なくとも映像で判別しがたいほどの出来のものを製作できる技術を持つ人は数少ないそうです」
勇音はそこで言葉を切った。日番谷がゆっくりと瞬きをする。
「つまり、朽木ルキアは製作者不明の義骸に入っていたってことでいいのか」
日番谷に、勇音は慎重に頷いた。そして再び口を開く。
「そして、朽木さんの傍にいた正体不明の死神は、ここ近年で行方不明になったどの死神にも当てはまらないそうです……と言っても、容姿の特徴と斬魄刀の形状で検索した限りだそうですが。…………更に」
言い淀むように勇音は口籠もり、わずかに戸惑いを見せた。乱菊も日番谷も、勇音から視線を外さない。少しだけ沈黙が降り、勇音は眼を伏せて、そして上げる。
「更に、朽木さんから死神としての力が失われているようです」
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07月13日(木)
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