ID:104863
G*R
by K・カヲル
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■雲の向こうの遠雷が呟きさえも掻き消すから 3-2
「だよな。なのに、朽木からは義骸の要請はなく、怪我をしたとの連絡もなく、そして担当地区である空座町ではこちらの情報通りに虚が片付けられているらしいぜ」
「なぜ、誰かを向かわせないんですか?」
そう言って、乱菊は片手を頬に当てて上を見上げた。俯き加減のルキアの姿をまた思い出し、乱菊は顔を振った。乱菊のその様子を日番谷は黙って眺めている。
「……表だって動けないわけですね。浮竹隊長は」
「そういうことらしい。浮竹らが不安に思っている理由はただ一つ、居所が掴めないのに朽木から連絡がないということだけ、なんだと。任期も延長させている手前、おおっぴらに探しにも行けねえだろうしな」
乱菊は苦笑する。
「それだけで朽木の様子を見に行ったら、確かに朽木にとっては更に居づらい雰囲気になるでしょうね」
呟くように乱菊は言った。数十年前、ルキアが入隊した頃に耳にした噂話が耳の奥に甦る。
日番谷は吐き捨てるように、くだらねえ、と言った。
「霊圧が捕捉できねえってだけで、探しに行くのには十分な理由じゃねえか。虚が片付けられているから構わねえだろうっていう奴らの方がおかしい。朽木の義妹が瀕死のままで戦ってたらどうするつもりなんだか」
「本当にそうなんですけどね。ただ、朽木の周囲は本当の理屈が通じない馬鹿も多いんですよ」
「……くだらねえな。本当に」
大きな眼を伏せて日番谷は呟く。長い睫の影が日番谷の淡い翠の瞳を濃くしている。眉間の皺が不愉快そうに深められた。
「まあ、仕方ねえから担当してる奴に伝えておけ。理由は何でもいい……そうだな、空座町付近で虚の動きが活発化しているようだから、お前も注意して様子を見ていろとでも言えばいいだろう」
「判りました。加えて、得られた情報の有無は問わず、マメに連絡を寄越すように伝えておきます」
頷くと乱菊は懐から伝令神器を取り出した。そしてアドレス帳から担当者を探し出すと、素早い親指の動きで伝令を打ち始める。
「副隊長から直接伝令がいくことは滅多にありませんから、驚くでしょうね」
苦笑しながら乱菊が言うと、日番谷は呆れた眼を乱菊の手元に向けた。
「俺はお前の打つ速さに驚いてるぞ」
「隊長は神器でのやり取りをあまりなさらないから、慣れてないんですよ。お友達が少ないんでしょう」
「お前は無駄に多そうだよな」
「そんなことありませんよ……よし、こんなもんか。ちょっとしたことのように書いておきましたので、詮索もされないでしょう」
打ち終えて送信ボタンを押し、乱菊は顔を上げた。日番谷が頷く。
「おう」
日番谷はソファに小さな身体を沈めると、大きく息をついた。乱菊は机上の書類を脇に寄せ、饅頭の盛られた器を日番谷の前に置く。日番谷が手を伸ばす。
「隊首会、お疲れ様でした」
「全くだ。いつも通り内容のねえ会だった。久々に浮竹が出席したせいで爺が張り切りやがって、えらく長引いたしな」
饅頭を頬張りながら日番谷は相変わらず不機嫌そうな顔をして話す。乱菊も饅頭を一つ手に取り、食べながら頷いた。
「そうだ、言っておくが、朽木ルキアの件はあまり口にするな」
口の中のものを飲み込んで、茶を一口飲んでから日番谷が言った。囓ったあとのある饅頭を持った手で日番谷は手振りをする。
「副隊長の連中は虎徹の妹や小椿あたりから聞いているんだろうけどな、詳しいことまでは知らないはずだ。この件を知っているのは、当事者の十三番隊、縁者である六番隊の朽木、あと空座町に担当地区が隣接している三番隊の市丸と八番隊の京楽、あと俺だけらしい」
「では、この件について情報交換が出来るのは、三番隊と八番隊ですね」
「そういうことだ。奴らも副隊長までには話すだろうから、吉良や伊勢にも聞いてみてくれ……阿散井はどうなんだ。朽木から何か聞かされているようか」
ルキアの話をしていた阿散井を思い出し、乱菊は苦く笑う。あの夜、阿散井は慣れた様子で自分のもどかしさを隠していた。その様子があまりに自分と重なって、乱菊は笑うしかない。
「どうでしょうか。朽木ルキアの行方不明については知っていたようですが、それを朽木隊長から聞いたのかどうかは、ちょっと……」
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07月10日(月)
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