ID:104863
G*R
by K・カヲル
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■雲の向こうの遠雷が呟きさえも掻き消すから 3-1
「俺の部下に白哉の義妹がいるのは市丸も知ってるな」
 何かの導きのようにルキアの話になり、ギンは眼を細めた。ただ口調だけは軽く軽く、
「ああ、ルキアちゃんですやろ。もちろん、知っとりますわ」
と言って笑みを浮かべる。白哉がわずかに眼光を鋭くしてギンを睨んだ。
「兄に親しげに呼ばれる筋合いはないぞ」
 その眼に怯みもせず、ギンは手をひらひらとさせる。
「堅苦しゅうせんでもええやないの。可愛え子を可愛く呼ぶんやもん。で、ルキアちゃんがどないしはったんです」
「彼女は現世の担当地域……空座町で虚退治をしていたんだが、任期が終了したのに、戻ってこないんだ。連絡もとれないし、何より彼女の居所を把握できない……今のところ、任期を延長したことにして、隊内と、白哉にしか報せていないんだが」
 浮竹の言葉にギンは笑みを消す。空座町。じわりと背筋に何かが走るのをギンは感じた。ギンは小さく息を吐いた。
「……そら、また。それ、皆に知れたらえらい噂になりますやろ」
「そうなんだよ。朽木は良くも悪くも目立つからな」
 浮竹は眉を寄せ、袖の中で組んでいた腕を解いて片手で頭を掻いた。長い白髪が指に絡まり、さらさらと音を立てて揺れる。それを白哉は身動ぎもせずにじっと、睨み付けるように眺めている。
「帰還予定日からもう一週間が経った。市丸、三番隊の担当地区が空座町に隣接しているはずなんだ。何か報告を受けてないか? 担当外の虚を退治したとかでも構わない。……妙なんだよ。朽木の居所が掴めないし朽木からの連絡もないし、隊から新しい担当者を派遣しているわけでもない。それなのに、瀞霊廷から送信される虚情報の通りに虚が退治されているんだ。朽木が退治しているのか、それとも通りかかった隣接の死神が退治しているのか。そのへんをはっきりさせておきたくてな」
 浮竹は珍しく厳しい顔をしている。ギンは数十年前の、十三番隊が副隊長を失ったときのことを思い出したが口にはせずに、ただ軽い笑みを浮かべて、
「すんませんなあ。特に妙な報告あらへんのや」
と言った。浮竹は小さく、そうか、と呟く。
「でも、空座町やろ?」
 ギンは声を低めた。そっと周囲を窺い、二人に顔を寄せるようにする。
「……あのお人が丁度いはるやないの。店、今はあの町でやってはったと思いますけどなあ」
「あの男に連絡をすることは許されておらぬ」
 白哉が硬い声できっぱりと言った。
「確かにあの男はこちらの品物を取り扱う店を現世で開いているが、あれは非公式のものだ。あくまであの男を監視下に置くための措置であり、品を卸す者と現世駐在の者以外は接触を禁じられておろう……現世駐在の者にしても、偶然に出会して、店を利用するくらいのことだ。もしルキアに何かあったとして、それをあの者が知ったとしても、そうしたらあの者からこちらに連絡がある。現世に店を出す者はそういう決まりになっている……たとえあの者でもな」
 白哉にしては珍しく饒舌に話し、そして、それに気付いたようにふっと口を閉ざす。ギンはそれを黙って聞いていたが、秘やかな声のまま、
「確かに、そうでしょうなあ」
と答えた。浮竹も硬い表情をして残念そうに息を吐く。白哉も浮竹も、あの店主がまだ瀞霊廷にいた頃には深い付き合いがあったはずだった。ギンは二人の顔を見て歪んだ笑みを浮かべる。おそらく、あの店主の顔は真っ先に二人の中で思い出され、そして真っ先に除外されたのだろう。そう考えて、ギンは自分の顔の歪みを隠すように少しばかり俯いて、息を吐いた。

 ルキアの件についてあの店主が……浦原が、何も知らないはずはないのだ。

 ギンの溜息につられるようにして浮竹がもう一度、大きく溜息をつく。そして顔を上げて、それをわずかに綻ばせた。ギンがその視線の先を見ると、誰かと話していたのかだいぶ遅れて、部屋から日番谷が出てきたところだった。
「おい、日番谷」
 浮竹が明るく笑いかけると、日番谷は目線だけこちらに向けて眉間の皺を深くした。
「……なんだよ。菓子はいらねえぞ」
「いや、菓子じゃない。ちょっと訊きたいことがあるんだ。大丈夫、松本には、お前に用事があるから呼び止める、と伝えてあるから」

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07月07日(金)
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