ID:104863
G*R
by K・カヲル
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■雲の向こうの遠雷が呟きさえも掻き消すから 1-2
「僕と同年代の死神も殆どが死んでしまった。隊長にまでなった者も退任してしまったしね。肉体の方はまだまだだと思うが、そう考えると年をとったように感じるなあ」
 ギンは小さく笑った。
「ボクからすれば十分に年寄りや」
 藍染が苦笑する。
「言っておくけど、ギン、それを卯ノ花隊長の前で言ってはいけないよ。彼女は僕と同年代なんだから」
「言うわけあらへん。そな、怖ろしい」
「……卯ノ花を怒らせると怖いからなあ」
 何かを思い出すように藍染は夜空を見上げ、そして苦笑いを浮かべる。そういうときの藍染からは冷ややかさが消え、穏やかな、『普段通り』の彼に見えた。藍染にもそんな穏やかな思い出があるということをこういうときに気づかされ、ギンは僅かに違和感を感じずにはいられない。
 蒼い闇の中、藍染はゆったりとくつろいでいる。
「そういえば」
 ギンが声を出すと藍染はちらりと目線を向けた。
「東仙さんはどないしはったん。密談せぇへんの」
「うん、要は狛村君との先約があると言っていた」
 藍染はそう言って、縁側に深く座り直す。
「この後の酒盛りには遅れるが来られるかもしれない、ともね。まあ、あまり三人でつるんでいるのを見られると良くないから。要が恐縮するのでそう言っておいたけど、本当に僕はそう考えているよ。君と要は意見が合うようにも仲が良いようにも見えないから、一緒にいる君らを眺めていて、いつも妙だなあと思うんだよね」
「用心深いことやねえ」
 ギンは呆れたように言い、ふらふらと月光から逃れるように桜の葉の陰に入った。藍染は縁側で月明かりに晒されている。
「要にはまた別の日に伝えておくつもりだよ。さて、他の人が来る前に話しておくが……崩玉の件、絞り込めてきている。少し僕が直接出向かなければならないだろうが、それで判明するかもしれないよ」
「直接て、どこに」
 ギンは藍染に顔を向けた。藍染の顔は月光でよけいに白く見えた。
「戌吊」
 きぃんと耳の奥で金属音がしたように感じた。
 遠い昔、自分が訪れたときの光景をギンは思い出した。戌吊。そこまで藍染が辿り着いていたことにギンは気付いていなかった。藍染は殆どのことを一人で行う。報されるのは多くが全て終えた後だ。
 内心の揺れを悟られぬようにギンは葉陰でうっすらと笑う。溜息が胸の中に溢れて、ギンは鼻でゆっくりと吐き出した。そして藍染の眼を真っ直ぐに見る。
「……そらまた遠いところに。さすがの藍染隊長でも数日はかかりますやろ。どないしはるんです?」
「そろそろ、五番隊に尸魂界内での虚討伐が廻ってくるんだ。時期が合うように僕の造り出した虚を戌吊付近に放す予定だ。さすがに隊長・副隊長格でないと相手にならないだろうから、僕一人が行くことにしようと思ってね。これならば誰にも変に思われないだろう」
 藍染は事も無げに説明する。ギンは呆れたように首を傾げた。
「策士ですなあ、相変わらず。雛森ちゃんが心配しはるやろ」
 藍染はふっと頬を緩めた。
「どうせ彼女を一人でやるわけにはいかないしね。僕が一人で行った方が隊としても効率的だとでも説明するさ。彼女は僕の言うことに逆らえやしないんだから」
「おお怖ぁ。よう手懐けはって」
 ギンはわざとらしく首を横に振る。それを見て藍染はくつくつと笑い、
「使えそうだからね、気に入っているだけさ…………市丸隊長」
と言った。ギンは木立の向こうに目をやり、そして片手を上げた。
「八番隊長さん、お早い起こしで」
 少し大きめな声でそう呼びかけると、木々の影の中から鮮やかな女物の着物を羽織った姿が現れる。京楽は片手の徳利を持ち上げて、笑った。
「君の方こそ早いじゃないの。市丸、どうしたの」
「仕事が山のようにあるよって、丁度イヅルも阿散井君のお祝いでおらへんし、こっそり早めに抜けてきたんですわ」
 ギンの返答に京楽は笑う。
「ああ、そういえば七緒ちゃんもそんなことを言っていたな。遅れて行くって言うから一緒に出てきたけど。あーあ、そりゃあ吉良君は明日も大変だ」
「いつも伊勢ちゃんを怒らせてはる八番隊長さんに言われとうないですわ」
「まあ、そうだねえ」

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07月05日(水)
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