ID:104863
G*R
by K・カヲル
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■雲の向こうの遠雷が呟きさえも掻き消すから 1-1
「朽木隊長の妹さん、現世で行方不明になっているらしいですよ」
檜佐木の言葉に、乱菊は顔を上げた。
「なんでまた」
「それがわからないから行方不明なんじゃないすか」
もっともなことを言って、檜佐木は手酌しようとお銚子を持ち上げる。そして、空だと呟くとくるりと振り返り、おねーさーんもう一本、とそれを振った。その隣で阿散井も振り返り、更にもう一本、と追加注文している。絣の着物に前掛けをした店員が駆け寄って、空のお銚子を持っていった。
「朽木って、今も十三番隊よね」
乱菊が隣の雛森を振り返ると、雛森が小さく頷く。
「そうです。私は清音さんから聞いたんですけど……行方不明っていうほどではないらしいですよ。ただ、戻るっていう連絡がそろそろあっていいはずなのに、ないとかで少し心配そうにしていました」
「ああ、俺は小椿から聞きましたね」
雛森の対角線の位置にいる檜佐木が耳聡く答える。
「騒ぎにはしたくないからまだ十三番隊の一部と、朽木隊長にしか報せてないらしいですけどね」
「それを更にここで話していいの? 修兵」
乱菊が苦笑すると、檜佐木はしれっと、
「この店は大前田さんの贔屓だから店から漏れるってことはないし、他の客から離れてるから聞こえませんよ」
と言った。大前田はそれを聞いてにやりと笑う。
「店からは平気だろうけどよ、俺らに話していいのかよ。俺も知らなかったぜ」
「いえ、何か問題に……って、朽木さんが根も葉もない噂をされていたりすることですけどね、そんなのに発展した場合の根回しのためにも副隊長の面々には報せておくことは浮竹隊長も暗黙の了解なので、とのことです。でも、浮竹隊長から話があるまでは部下にはもちろん、隊長に話さないで下さい」
俺も東仙隊長に話してないんで、と檜佐木は小さく付け加えた。雛森もそれに頷く。
「清音さんからそう聞いていたんで、あたしも藍染隊長に話してないです」
「あら、あんたが藍染隊長に隠し事なんて珍しいわね」
乱菊がからかうように言うと、雛森がぱっと頬を染めた。
「珍しくなんかないですよー。あたしだって、言ったらまずいことは黙ってますってば」
雛森の慌てた様子に皆が笑った。
乱菊の隣では吉良が寝ぼけ眼をこすりながら話を聞いていたが、ひょいと阿散井を見て少し眉を寄せて笑った。注文を終えて向き直った阿散井がその笑みを見て顔をしかめる。
「何だよ、吉良」
「いや、ね、心配だろうなって」
阿散井はさらに顔をしかめる。どこからが自前の眉なのかわからない眉がことさらに歪んだ。
「別に。俺ぁ、心配なんかしてねえよ」
「でも、早く報せたいじゃないか。せっかく、正式な日に報せようとして帰りを待っているのに。あと数日で任官式だよ」
吉良は優しく言った。そこに檜佐木が割って入り、
「しかも朽木隊長の下だもんなあ。驚くぜ」
阿散井の脇腹を肘で突く。阿散井はますます不機嫌な顔になった。
その会話を少しきょとんとして聞いていた乱菊の肩を雛森がちょいと叩く。
「阿散井君、副隊長就任が決まったのに、朽木さんが帰ってくるまで報せないで待っているんです。驚かせようって。……阿散井君と朽木さん、幼なじみなんですよ。朽木さんの入隊が早かったので卒業年次は違うんですけど、最初はあたし達と同学年でしたし」
雛森はそう説明すると、ご存じじゃなかったんですね、と首を傾げる。乱菊と、雛森の前に座っていた大前田が頷いた。
「あれ、あんたも知らなかったの」
ひょいと乱菊が大前田に尋ねると、大前田は頷いてちらりと横の阿散井を見やる。
「まあ、人の事情はどうでもいいっすしね、俺」
「そういう奴よねえ、あんたって」
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07月04日(火)
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