ID:104863
G*R
by K・カヲル
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■地上の縁からのぞき込むと深遠の青が底もなく 14
 ギンは引き出しから副官章を取り出すと、左上腕に付けた。そして彼独特の、短い斬魄刀を腰に差す。一連のその動作を、藍染が興味深げに笑みを浮かべて眺めて言った。
「珍しいね、ギンが自分から行こうだなんて」
 ちらりとギンは視線を向ける。そして、いつも通りに笑った。
「ボクかてたまには働きますわ」
「そう言えば……、あの斑には君の同期がいたね。確か君らが学院の頃に会ったことがあるはずだ」
 ギンは笑みを絶やさずに、更に口角を引き上げた。
「両方におりますわ。あの子らには一応世話になりましたさかい、助けんとあきまへんやろ」
「それこそ珍しいな。君が同期を大事にしているとは思わなかったよ」
 藍染が優しく微笑む。その眼の奥を見据え、ギンも微笑んだ。
「仲良うした人は誰もおりませんわ。ただあの子らには、世話になりましたからなあ。代返とか、色々」
「そういえば、死神になってからも、あの黒髪の小さな女性と時々立ち話なんかしていただろう。あの女性は当時も今も君を見ていたようだったね」
「よう見てはりますな……あのお人はボクと平気で話しはる数少ない人でしたわ」
 藍染の横をすり抜けて、ギンは執務室を出ていこうとした。その後ろ姿に藍染が思いだしたように呟く。
「そういえば、もう一斑の、松本君とは話しているところを見ないね」
 足を止め、ギンは振り返る。藍染はじっとギンを見ていた。
「……そうですやろか。昔からあんなもんですわ」
「仲が悪いわけでもないんだろうと踏んでいたけど、親しくはしてないね」
 ギンはにやりと口角を引き上げた。
「ボクが入学初日に遅刻したせいで、次席だった彼女が六年間も級長しはったんですわ。それでえらい迷惑がられましたよって。松本さんにはよう怒られましたわ。その度に他の女の子らが間に入ってくれはりましたなあ」
「それは大迷惑だったろうね」
「ボク別嬪さん大歓迎なんですけどな」
「ならば助けに行ってくるといい。彼女も救援でその場所にいるはずだから、少しは見直してもらえるんじゃないか」
「熱烈にお礼してもろうてきますわ」
「おや、それなら僕が行くよ」
「何言うてはるんですか。ほな、行ってきますわ」
 笑いながら言った藍染に手を振って部屋を出ると、ギンは急きそうになる足を押さえてゆっくりと廊下を歩いた。


 見張りが大声で叫んだときには、もう、虚が目の前にいた。
 なぜ姿が視認できなかったのか。そんなことを疑問に思う暇もなく、乱菊は斬魄刀を抜くと、居合いの要領で虚を斬り捨てる。背後で怒号にも似た咆哮が幾つもあがり、振り返るとそこには虚の大群と襲われる部下達の姿があった。襲われながらも部下達は斬魄刀を抜き、応戦している。誰かが「退くな! 弔いじゃねえか!」と叫んだ。
「慌てるんじゃないよ! いつも通り、二組になってお互いの背を守りな!」
 指示を出しながら乱菊は一跳びで虚の大群の中に飛び込むと、その勢いのまま数体を斬り裂いた。襲われて膝をついていた部下の一人がふらつきながら立ち上がり、ありがとうございますと乱菊に呟いた。乱菊は敢えて笑ってみせる。そして最前線に立つと、振り下ろされようとしていた虚の手を受け流して、その腕を斬り裂く。動きが鈍る虚の体にもう一太刀をあびせると、その体は雲散霧消した。
 虚は不格好に大きい掌をこちらに向けて攻撃してくる。その不自然な攻撃に、乱菊は違和感を感じていた。そしてふと、検分していた遺体を思い出す。
 こちらに向けられた掌には、唇のない口のような切れ込みが見えた。そこから粘性の高い液体が滴っている。
「虚の手に掴まるな!」
 乱菊は心持ち低い声で叫んだ。
「掌が変だ! 爪に気を付けるのもそうだが、掌を確実に避けろ!」
「分かりやしたぁ!」
 自棄のように大きな声で部下達が返事をする。声の数から、まだ全員が無事のようだと判断し、見渡すこともせずに乱菊は目の前に迫り来る虚の腕を開きにするように斬り裂いた。斬った先から虚の体が空気に溶けるように消えていく。

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06月17日(土)
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