ID:104863
G*R
by K・カヲル
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■絶対的な響きをもって鐘の音は時を告げた 7
「ははは。そりゃあそうだ。僕も抱えるなら女の子の方がいいなあ」
 藍染の柔らかな物言いを聞きながら、ギンは必死で通常の自分を保ち続けていた。何か嫌な予感がして、ギンの背筋は緊張し続けている。藍染の何かが、ギンの中にある警鐘を鳴らし続けている。
「君はどうしてあの小屋にいたんだい」
 ギンは用意して置いた答えを口にした。
「試験受けに歩いてたら、女の子の悲鳴がしたんよ。何の気なしに覗いてみたら女の子が逃げ出すところやないか。中にいた兄さんらはこっち襲いかかるし、しゃあないから潰しただけや」
「試験前日にまだ瀞霊廷に着いていないって問題があるよ、それ」
「遠い地区から来てるんよ。しゃあないやろ」
「女の子はどうなった」
「知らん。どっか逃げたんやろ」
 必死に口調を軽い響きにさせて、ギンは慎重に答えた。
「うーん。その女の子にも事情を聞く必要があったけど仕方ないな……なら、君はたまたま通りかかっただけで、あの死神達がそれまでどうしていたかは知らないんだね」
「そうや」
「うーん、やっぱり女の子からも聞きたかったなあ」
 溜息をつく藍染の背中を、あえて軽く眺めるようにしてギンは様子を窺っていた。視線に力を込めないこと。言葉を軽く発すること。羽織を握る手を緩めておくこと。乱菊の存在を感じさせないこと。全てを装って、ギンは藍染と対峙していた。
「で、これは僕の個人的な興味だけど、君はその斬魄刀はどこで手に入れたのかな」
「なんや、それ」
「君の持つ刀のことだよ。一般的には死神でないと手に入れられないんだ」
「以前、人にもろうた」
「そうか……瀞霊廷は物流の管理に気を付けないとならないようだな」
 藍染の口調はあくまで柔らかい。ギンは先程の黒ずくめの男達を思い出す。彼らは何の疑問もないように藍染と接していた。尊敬の意すら感じさせる態度だった。どうして彼らは恐怖を抱かないのか。どうして自分は恐怖を感じ続けているのか。
 背中のギンの様子を気にしていないかのように、藍染はギンに問う。
「君は、いつ始解ができるようになったんだい」
「……おっさん、ボク何も知らんのや。シカイって何や」
「刀を君にくれた人は何も教えてくれなかったんだな。うーん、どこから説明をすればいいかな」
「刀のことか」
「そう。まあ入学すれば習うだろうから、詳細な説明はいいか。とりあえず、刀が変形することだね」
「おっさん、見てたんか」
 どこから。
「ああ、最後の死神を殺して、伸びた刀がするすると戻るところあたりを」
 ギンの警戒を知っているかのように、藍染はさらりと答える。
「あの様に刀を伸ばすことができるようになったのはいつ頃からなのかな」
「あのときが初めてや」
「急にできるようになったのかい」
「そうや。それまでは普通の刀やった」
「へえ……」
 ここで初めて、藍染の声がわずかに低くなった。
「……天才というやつかな」
 それはあまりに小さな差異だったが、ギンの神経を緊張させるには十分すぎるほどの変化だった。ギンは装いを解かないことに全神経を使いながら、無言で藍染を窺う。
 藍染は薄く笑っているようだった。
「君のような子が死神になるのは心強いね。それくらい実力があるなら、飛び級してすぐに死神になれるよ。僕が推薦しようか」
「遠慮するわ。やっと安全な暮らしできるんや。なんですぐキリキリ働かなあかへんのや。少しはのんびりしたいわ」
「ははは。そういうものか。そうだね、そういうものかもしれないね」
 快活な笑い声が気味悪い。背中に汗が流れるのを感じて、ギンは気づかれないように周囲を見回す。空はもう晴れ上がった朝を迎えているが、まだ草原は続いている。町の影すら見えてこなかった。ギンは早くこの馬から降りたかった。早くこの男から離れたかった。早く乱菊に会いたかった。
「君は数字の大きい地区出身なのかな」
 藍染はどこまでも穏やかな声でギンに問い続ける。
「そうや」
「だから身を守る術を心得ているのか。あの様子だと、人を殺すことにも躊躇がないようだね」
「躊躇してたら自分が潰されるわ」

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04月10日(月)
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