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ケイケイの映画日記
by ケイケイ
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■「トロン:アレス」

めっちゃ面白かった!予告編でビジュアル面だけで惚れ込み、是非観ようと思いました。SFは駄目な私からすると、こんな事は珍しいです。これからどんどん進化するはずのAIについて、あれこれ考える側面もあり、期待値を上回る楽しさでした。
監督はヨアヒム・ローニング。
ディリンジャ―(エヴァン・ピーターズ)によって作られた、AIの戦士アレス(ジャレット・レト)。知性と教養と強靭な破壊力を持つアレスですが、現実世界では、29分しか実存じません。プログラマーのイヴ(グレタ・リー)が、AIを継続させるコードを発見した事を知ったディリンジャ―は、コードを奪還するべく、イヴの元へアレスを差し向けますが、これが切欠で、アレスは反乱を起こしていきます。
未来社会やアクション場面ですが、スケールが大きいだけではなく、今回は美しく感じました。何故かと考えたら、光の使い方です。四方八方に放たれる光は眩くて、一瞬神々しいと感じる時さえありました。予告編はほんの片鱗で、その片鱗に惹かれて観た私としては、大変満足でした。それと空中戦が多かったのも、良かったです。武器を手や背に、これも美しい鳥のようでした。
人間を襲うって、ダメじゃないの?と一瞬思いましたが、それはアシモフのロボット三原則。
1 ロボットは人間に危害を加えてはならない。
2 ロボットは人間の命令に従わなければならない。
3 ロボットは自らの存在を守らなければならない。
AIはロボットではないので、当て嵌めなくても良いのですね。ロボットやアンドロイドを超えるものが出て来たわけです。そこでふと思いましたが、アシモフが提案した三原則は、人間とロボットの共存を願って作られたものです。しかし、アレスらAI戦士に対して、平然と「expendable=使い捨て」を連呼する創造主であるディリンジャ―。その事に微かな疑問を持ち始めるアレス。
切欠はイヴを知るため、彼女の半生をアレスが知る事から始まります。映像で走馬灯のように流れるイヴの半生を、アレスは「愛と喪失」と表現します。それは感情で言うと、「喜びと哀しみ」です。笑顔や涙、その他の感情に彩られたイヴの半生は、豊かで充実していました。
自分の現在と鑑みて、疑問と刺激を受けたのでしょう。感情はインプットされていなかったはずのアレスですが、知性や教養が感情を芽生えさせ、成長させたのです。人間だって、適材適所で感情にまみれてこそ、成長するはずなんだよと、AIのアレスに教えて貰います。
手本は誰でも良かったのかいうと、さにあらず。イヴ自身も亡くなった妹共々優秀な人ですが、自分はゲーム開発、妹は社会生活の発展に、その力を発揮していました。その事にコンプレックスがあるイヴ。でもイヴが偉いのは、妹への愛情から、妹の意思を継ぎたいと思った事。愛情がコンプレックスを上回り、昇華する事で、自らの葛藤から抜け出したのです。見事な成長と向上心です。
アレスの正義の反乱は、手本がイヴだった事から始まります。手本が強欲で野蛮な野心家のディリンジャ―だけだったアテナ(ジョディ・ターナー・スミス)との違いに、表現されていたと思います。ここに人間とAIの、共存の糸口があるのではないかな?
閉じ込められた世界で、フリン(ジェフ・ブリッジス)と出会うアレス。「トロン」と「トロン・レガシー」は未見ですが、筋だけ頭に入れていて、良かったです。意味が解かりました。「トロン」は、こんな世界が繰り広げられていたのですね。今から観ると、レトロな感じですが、初作のファンだった方は、きっと懐かしいと思います。
何度も出てくる「信じる」という言葉。キーワードです。関係性において重要なWordなんだと、人間とAIの交流を観て、改めて感じ入りました。
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10月23日(木)
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