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ケイケイの映画日記
by ケイケイ
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■「ハスラーズ」

富裕層の男性相手に、底辺の女性たちが違法に金を巻き上げる作品なんて、今の時流に合っていないとの声のある作品ですが、ストリッパーの衣装の上にゴージャスな毛皮を羽織るジェニファー・ロペスが、半裸の衣装のままのコンスタンス・ウーに、「寒いでしょう?こっちにおいで」と、毛皮に二人くるまる様子に、私の視点は定まりました。痛快でも愉快でもない、この作品は貧困と女性蔑視を問う、秀逸なフェミニズム映画です。監督も女性のローリーん・スカファリア。
幼い時に両親に捨てられたデスティニー(コンスタンス・ウー)。育ててくれた祖母を養うため、ストリップクラブを渡り歩いています。トップダンサーのラモーナ(ジェニファー・ロペス)に気に入られ、男性を虜にするダンステクニックを伝授して貰います。次第に姉妹のような関係になる二人はコンビを組み、大金を稼ぎます。しか2008年の金融危機で、クラブも大打撃仕事がなくなった彼女たちは、それぞれ別の道を歩みます。しかし、また貧困にあえぐ中、ラモーナが仲間のメルセデス(キキ・パーマー)、アナベル(リリ・ラインハート)と組み、ウォール街の生き残った富裕層の男性相手に、違法な荒稼ぎをしているのを知ります。ラモーナに誘われたデスティニーは、グループの中でも頭角を現します。
四人の女性たちの構成は、アジア、ラテン(プエルトリコ)、黒人・白人と、全て別々。実話を元にした内容ですが、これは女性のための映画にしたいと願う、作り手の気配りだと思います。そうそう、ストリッパーには、本物のトランス女性もいました(トレイス・リセット)。
彼女たちが、何故犯罪に手を染めたのか?親がいない、学がない、手に職がない。そして生まれついての貧困。頼るものがいない彼女たちは「女」と言うしか、武器がなかったのです。今年のオスカーのスピーチで、私が一番感銘を受けたのは、自分のヒーローは両親だと言った、ローラ・ダーンでした。私は破天荒な両親の元に生まれ、苦労しましたが、反面教師と言う手本を残してくれました。お嬢さん学校に通っていた、成金の小さな箱入り娘だった私は、彼女たちに無いものを、すべて持っていた。どんなに辛い境遇だったろうと思います。私は彼女たちを軽々しく非難したくありません。
私と同じように感じているのは、彼女たちの過去を取材をしている、記者のエリザベス(ジュリア・スタイルズ)。デスティニーが、「あなた、家はお金持ち?両親はいいるの?」と聞くと、「貧しくもなくお金持ちでもない。父は記者、母は精神科医」と答えると、鼻で笑うデスティニー。どうせ私の気持ち何か、わかりゃしないと言う事でしょう。しかしエリザベスは、「私はあたなたちを断罪する側よ。でも私自身は、被害者の男性たちは、自業自得と思っている」と、答えるのです。デスティニーの表情が変わります。エリザベスは、罪を問うより、なぜ彼女たちが犯罪に手を染めたのか?その理由を掘り下げたいのです。それは、女性たちすべてが、共有すべき認識だからです。
作り手は、この目線を持って欲しいのじゃないかしら?ウォール街の証券マンは、詐欺まがいの手で不動産を売りまくり、金融危機で客の懐が破綻しても、知らぬ存ぜぬ。鼻の下を伸ばしてカード詐欺に合っても、それは身から出た錆と言うものです。事実、被害に合った客たちは、警察には届けない。500ドルや1000ドルは、端金なのです。たまに苦情を言う客には、「妻や会社にこの事をばらす」と言うと、みんな引っ込む。なら、何故警察に捕まったのか?
富裕層の男性を相手に「仕事」をしていたのが、カモがいなくなり、ただの「男性」に手を出したから。彼は彼女たちと同じ場所に居た人なのです。もう潮時だと解っていたのに、グズグズ辞められなかったのは、後から来た薬中のドーン(マデリーン・ブルーワー)を、ラモーナは引き上げたかったのだと思います。底辺の女たちに目をかけるのは、過去の自分の辛さがそうさせるのです。そしてラモーナの深情けが、命取りになる。
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02月13日(木)
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