ID:10442
ケイケイの映画日記
by ケイケイ
[928216hit]

■「少年メリケンサック」
やっと観ました。面白くてびっくり!だってもっと微妙な感想かと思ってたんだもん。「オトナコドモな男」の悪ふざけ満載の演出ですが、私は「本当に男ってバカだわ・・・」と、愛でながら観てしまいました。でもバカだけじゃないぜ!監督脚本のクドカンは、諸先輩方に彼なりの敬意を表して演出していて、私はグッときました。中身もちゃんとありますよ。

メイプルレコードの契約社員のカンナ(宮崎あおい)は、二年間働いても結果を出せずクビ寸前。最後にと社長(ユースケ・サンタマリア)に提案したのが、ネットで大評判のパンクバンド「少年メリケンサック」。気に入った社長から契約して来いと言われたカンナは、張り切ってベースのアキオの所在を見つけ出したのですが、そこにいたのは50歳のおっさんになった、アル中気味で身を持ち崩したアキオ(佐藤浩市)。何とネットでアップされた動画は、25年前のものだったのです。どうするカンナ?

パンクロックが注目を浴び始めたのは、確か私が中高校生の頃で、セックスピストルズやラモーンズ、トーキングヘッズなど、私も耳にはしていました。その頃は「普通のヘヴィメタ」やハードロックを中心に聞いていたもんで、アナーキーな若者の社会への怒りを、大人は眉を顰める風体(←ここ重要だ)で表現するロック、てな感じで受け止めていました。だからパンクの精神なんて、カンナ同様あんまりわかっちゃいないのです。クドカンは私より更に年下の1970年生まれ。だから体感していたわけじゃない。でも彼なりに勉強して下地を作り、日本の音楽シーンを懐古しながら、きちんと作ってあります。

アキオが引き抜かれたアイドルポップグループにモデルがあるの、わかりました?あれは「ドラゴン・ボール」の主題歌(ちゃ〜ら、へっちゃら〜♪の方)を歌う、今やアニソンの大御所・影山ヒロノブがいたバンド、「レイジー」がモデルです。扮装であれ?と気づき、洋もののニックネームがつき(影山氏はミッシェル。アニソン好きの二男と彼の話をする時は、我が家は今でも『ミッシェル』だい)、極めつけはヒット曲。「赤頭巾ちゃん、なんとかかんとか」みたいなタイトルでしたが、レイジーの代表的なヒット曲は「赤頭巾ちゃんご用心」でした。でも彼らには消してしまいたい曲だったというのは、解散後知りました。簡単にレイジーを紹介しますとですね・・・

レイジーのメンバーもスカウトされた時はヘヴィメタでデビュー出来ると思いこんでの上京だったのに、蓋を開ければ恥ずかしいアイドル路線。アキオと同じように、ヘヴィメタルをやりたくて発展的に解散。その後ギタリストの高崎晃とドラムの樋口宗孝(故人)は、多分日本人のヘヴィメタでは世界で一番成功した、「ラウドネス」を結成。キーボードの井上氏は現在音楽プロデューサーで、音楽関連の会社ランティスの社長です。だからユースケの役は、彼がモデルかも。ちょっと渋谷陽一も匂ったけどね。

アキオ・ハルオ(木村祐一)兄弟の父役に犬塚弘を配してるのも、ちゃんと彼が、クレイジー・キャッツでベーシストだったと知っているからだと思います。寝たきりの役だったけど、あの中指立てての強烈なシーンは、年齢からすると(80歳前後)とってもブラックだけど、クドカン流のリスペクトじゃないかなぁ。その後のアキオを引き出したのは、父ちゃんの姿だったと思います。

兄弟の確執も、私には納得出来る作りでした。兄を尊敬していた弟の方が先に人気が出て、嫉妬する兄。上下関係がきちんとしていた兄弟だったのに、音楽業界の魔物に取りつかれ、大事なものを見失います。そして人として絶対してはいけないことを、弟にしてしまった兄。でも兄に愛憎混濁の思いを抱きながら、まっとうに生活する弟と、朽ち果ててしまった兄の対象的な姿を描く事で、兄の深い悔恨を表現していたと思います。


[5]続きを読む

03月01日(日)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ

[4]エンピツに戻る