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ケイケイの映画日記
by ケイケイ
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■「ジェネラル・ルージュの凱旋」

前作「チーム・バチスタの栄光」の続編。と言っても田口・白鳥コンビは健在ながら、全く別のお話です。前作も平凡な出来ながら、窓際心療内科医師・田口役の竹内結子の、とぼけた味わいがとても気に入ったので、早速初日に観てきました。それにまぁさぁ、医療業界の末端の末端の受付業務(それもずっとパート・・・)をしているわけですよ、ワタクシ。だからやっぱし、観なくっちゃね。この作品の舞台の大学病院なんか、医事課は死ぬほど大変だろうなぁ、レセなんかきっと徹夜だよ、と関係ないことが頭をよぎったのはさておき、俳優陣の頑張りで、踏みこみの甘い部分も多かったですが、まずまず楽しめました。厚生労働省お役人の阿部ちゃんの役は、原作通りなら、現役医師で原作者の、海堂尊の皮肉が込められていると思います。監督は前作と同じ中村義洋。
バチスタ手術問題解決の功績が認められ(?)、心療内科医師の田口(竹内結子)は、院内の諸問題を扱う倫理委員会の委員長に任命され、気が重い日々。そんな彼女の元に、「救命救急センター長の速水医師(堺雅人)は、医療器具メーカーと癒着している。看護師長の花房(羽田美智子)も共犯だ」との怪文書が舞い込みます。その頃、間の悪い事に、当の医療機器メーカーの担当者(正名僕蔵)が、院内で自殺します。田口が怪文書を院長(國村隼)に見せたところ、解明して欲しいと頼まれます。仕事は出来るが、院内に敵も多い速水。難しい仕事だと田口が戸惑っているところへ、いっしょにバチスタ事件を解決した、厚生労働省役人の白鳥(阿部寛)が、患者として運び込まれてきます。そして彼にもまた、同じ怪文書が舞い込んでいたのでした。
冒頭荷が重過ぎる委員長役にトホホとなりながら、ますます窓際感際立つボ〜とした竹内結子のユーモラスな姿に、これは彼女の当たり役だなぁと再確認。磨きがかかった天然ぶりが、重くなりがちな内容を救い、作品を支えます。
内容は昨今マスコミを賑わしている、患者のたらい回しと表現される、救命救急の受け入れ態勢を主軸に据えています。最近は医療崩壊が盛んニュース番組の議題に上る事が多いですが、ドクターヘリに多額の費用がいることでなかなか導入が進まないこと、不眠不休の医師や看護師の献身的な姿で、何とか医療崩壊がとどまっていること、慢性的に病院が赤字なことなどが、描かかれています。手一杯なのに、酔い潰れて大学病院に運ばれてきたり、骨折くらいでやってくる白鳥など、患者側の「ブランド志向」にも、反省を促しています。
でもそれがわかるのは、私が末端とは言え、業界の人間だからかも知れません。医療崩壊の抜本的な問題は、国の医療費にかける額が少ないことと、慢性的に人手不足なこと。それと所謂コンビニ受診。大した病気やケガでなくても、お気楽に夜中に病院にかかってしまうことです。国は今、かかりつけ医制度というのを、推奨しています。何でもかんでも大病院にかかるではなく、まずは何でも相談できる町の開業医で診察してもらい、必要ならば検査や手術・入院先を紹介して、小康になったらまた元の開業医の所に戻るという方法です。これは病院の規模で格差をつけているのではなく、役割分担で、急性期の病院の負担を減らそうという試みだと思います。せっかく現役医師が原作者で、ヒットの期待できる作品なので、この辺もっとアピールしても良かったかも。
そしてラストの方でちょっと出てくるのですが、医療者側と患者側の溝です。断腸の思いで、もう助かる見込みのない患者を切り捨てる医師の気持ちはわかりますが、切り捨てられた方は、抱きしめてもらったところで、癒されることはありません。どうも医師側の苦労ばかりが強調されて、二方が歩み寄る場面がありません。原作者が医師なので、視点が医師寄りなのは、しょうがないのかしら?
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03月09日(月)
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