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ケイケイの映画日記
by ケイケイ
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■「トウキョウソナタ」


あぁ、もう!タダ券あるからって、観なきゃ良かった!これならぶちゃいくで太っちょの可愛い女の子を観に、「落下の王国」の方が絶対ましだったと思う。予告編で悪い予感がしてたんですよ(なら観るなよ)。キョンキョンが「誰か私を引っ張って…」というシーンね。亭主がリストラされてるのに、そんなこと言ってる場合かよ、と思いましてね。でもその予告編の方がずっと本編よりましだったんだから、どれだけ個人的にトンデモ家庭劇だったか、おわかりか?折角家族各々のキャラは、嫌悪も含めてリアルだったのに、そのリアルを、どうしようもない脚本の勉強不足と悪意で(そう悪意なのよ!)、ぺしゃんこにしちゃってます。多分「ありふれた家庭の、徐々に始まる崩壊を、ラストで見事に希望の光を与え再生させる、傑作ホームドラマ」なーんて感想が溢れると思いますがね、私は久々に怒りモード全開です。今回罵詈雑言モードで行きますんで、よろしく!監督は黒沢清。

タニタの総務部課長の竜平(香川照之)は会社をリストラされ、職探しをしています。長男貴(小柳友)は大学生ですが、昼夜逆転の生活をしており、突然アメリカの軍隊に入隊したいと言い出します。小学生の二男健二(井之脇海)は学校の先生とそりが合わず、父親にも不満があります。ある日思い切って以前から気になっていたピアノ塾の先生(井川遙)の元に、親に内緒で入塾を希望します。そして妻であり母である恵(小泉今日子)は、家族それぞれに秘密を抱えているだろうと察しながら見守っています。

馬鹿と阿呆の品評会ながら、家族四人の造形は、なかなかリアルです。竜平の小心者でいばりくさる親父なんか、本当にいそうですよ。特に自分より背丈が大きくなった長男には怒り心頭でも手を出さすに、小学生の健二には、ちょっと気に入らないだけで手を出す様子は、器の小ささ満開です。妻にリストラが言えない夫というのも、いるでしょうね。面接で「あなたは会社のために、何が出来ますか?」に答えが詰まる場面も印象深いです。竜平は46歳、与えられたことを一生懸命やっていく、そういう世代でしょう。時代が変わったのに、頭も心も追いつかない様子が、上手く出ていました。拾った金を盗めない小心な善人ぶりも良かったです。

恵の閉塞感もよくわかる。しかし好きなタイプの母親じゃないのね。息子二人の母にしては、いやに大人しい。私なんか息子三人は手も出す足も出すで、シバキ回して育てたので、朝帰りしといて「今から寝るから掃除機やめて」だの、グータラバカ息子のくせに、いきなりアメリカの軍隊に行くだのという息子なんぞ、うちなら夫と二人で100%座敷牢です。まぁだから息子たちが親を知っているので、こういうふざけたことは言わないわけなんですが。長男も嫌いだけど、如何にも今時の一部分の若者を描きましたって感じなんでしょう。ちなみに私が違和感を抱いた、「誰か私を・・・」は、あのシーンなら別段疑問はありませんでした。

突飛な行動をする次男の造形は、全く問題ありませんでした。担任とピアノの先生の描き方は気に入りませんでしたが。

ではどれだけ脚本が現実と乖離しているか、検証に入ります。ネタばれもりもりなので、ご注意を。

まずカッと来て会社を辞めた竜平の気持ちはわかりますよ。しかし何故速攻ホームレスのための炊き出しに並ぶ?タニタは体重計など健康関連の計測器を製造販売する実在の会社です。同じ境遇の黒須(津田寛治)に、畳掛けるように「退職金は?失業手当はどうした?」と聞かれますが、その時の竜兵の答えは、「お前、すごいな・・・まだ何も」。はぁ???こんな大きな会社の総務部の課長だったんでしょ?こんなこと、パートの契約社員だって真っ先にやります。この場合会社の温情で失業手当が後回しになる自己都合ではなく、早急に出る会社都合にしてもらう余地は、話し合いで充分あります。炊き出しに並ぶ前に、やることいっぱいでしょ?何度もいうけど、こんなボンクラで本当にタニタの課長やれたの?


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10月06日(月)
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