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ケイケイの映画日記
by ケイケイ
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■「JUNO/ジュノ」

6月は「接吻」を皮切りに、超のつくお気に入り作品が続出。このまま今月行くのかと思っていましたが、何と鉄板で大丈夫と予想していたこの作品で、今月初めてバッテンつけたい気分になりました。作品の完成度やキャラクターの掘り下げ方には問題なく、とても出来の良い作品だと思います。私が非常に違和感を感じるのは、描かれる世界観です。これはアメリカのお話、日本とは事情が違うとわかっていても、この作品を面白いと言えるほど、私は進歩的な親ではありません。監督はジェイソン・ライトマン、脚本は元ストリッパーだったことも話題のディアブロ・コディ。今年のオスカーの脚本賞を受賞しています。
16歳のちょっと個性的な女子高生のジュノ(エレン・ペイジ)。BFのポーリー(マイケル・セラ)と好奇心で一度だけセックスするも、妊娠します。父(J・K・シモンズ)、継母(アリソン・ジャネイ)にはなかなか言い出せず、親友のリア(オリヴィア・サールビー)に相談。一度は中絶しようとするのですが、結局両親にも打ち明け、出産後は子供のいないヴァネッサ(ジェニファー・ガーナー)とマーク(ジェイソン・ベイトマン)夫妻に里子に出す契約をします。
アメリカの今の等身大の風景を観られるのが楽しいです。ティーンの部屋や、いかにもアメリカらしい食べ物や飲み物、学校生活、子供の意志を尊重する親子関係が、生き生きテンポよく観られます、。アメリカは片親でも条件を満たせば子供を養育でき、その辺は条件がかなり厳しい日本とは、だいぶ事情が違うのは、昔から知っていましたが、里子の募集がタウン誌に載るとはびっくりしました。
とにかくキャラがみんないいです。ジュノは音楽は70年代、映画はB級ホラーの大ファン。頭でっかちで達観したような、小生意気な言葉をいっぱい吐きます。しかし妊娠中の揺れる心は、とてもハイティーンらしい幼さと繊細な感受性を感じさせ、自分で自分がわからない年頃の危うさと脆さ、そして愛らしさを感じさせます。演じるペイジがこれまた抜群。早口でまくしたてるその奥の不安を、本当に上手に表現していて、ジュノ=ペイジに観えました。
継母との仲は良好みたいで、母と子というより、女同志として上手く付き合っているという感じで、これもアメリカ的風景の美点だと思いました。ジュノとはケンカもするけど、娘の尊厳を踏みにじる相手には、きっぱり言い返す継母さんは、とってもイイ感じです。親友のリアも美人に似合わず毒舌家で、外見はかなりジュノと違いますが、仲が良いのは合点がいき、この辺の友情の見せ方もネチネチしていなくて、とっても良かったです。
女性陣で一番印象に残ったのはヴァネッサ。容姿端麗でハイクラスの今の暮らしは、きちんと仕事のキャリアを築いて、自ら手にしたものなのでしょう。夫の稼ぎでセレブ妻になったのではないところも好感度大。きっと今までは努力で何事も克服できたのでしょう。なのに赤ちゃんだけは、どうすることもできなかったのですね。養子という選択は、私はとても建設的なことだと感じ、彼女の性格も表せています。血の繋がらない子供の母となることで、神経過敏と思えるほど入れ込むヴァネッサを、ガーナーが共感を呼ぶ演技で見せてくれます。正直彼女がこんなに上手く演じるとは、びっくりでした。
男性陣もこれまたいいです。父親らしい包容力でジュノを包む(ちょっと疑問はありますが、それはのちほど)父。突然の妊娠を告げられて、呆然以前の、訳のわからないポーリーの様子も、この年代の男子なら当たり前の様子です。愛しているという感覚もなく、「ちょっと好き」な相手に誘われて初めてセックス、それで妊娠してしまっては、「男の責任」を持ち出すのは酷というもの。せり出すジュノのお腹を見つめつつ、ポーリーなりの精一杯の誠意と愛情を彼女に示す様子は、とても好感が持てました。
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06月21日(土)
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