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ケイケイの映画日記
by ケイケイ
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■「焼肉ドラゴン」
父の語りで、何度も出てくる「働いて働いて働いて」の言葉。日本の人も同様です。しかし「働く」意味が違う。私の父は一代で会社を興しましたが、口癖は「日本人の三倍金を持たな、韓国人は仕事は出来ん」でした。日本人が10万で接待するなら、30万の接待。よそで30万で請け負う仕事なら、うちなら10万でやりまっせ。そうやって、仕事を取ってきたのです。

そして多くの在日は、日本の人がやりたがらない汚い仕事、辛い仕事をやって、私たち二世三世を育ててくれた。私たちは、統治と戦争の狭間の落とし子です。真面目に仕事をし家庭を持ち、税金も年金も納めて、微力ながら日本社会にも貢献しているはず。日本の人と何ら変わらない暮らしです。ワールドカップで、韓国と日本、両国応援するのは、罪なのか?韓国人としてのアイデンティティーを持ち続ける事は、反日ではないはずです。

立ち退きのための役人が来た時、大人しい父は、作中初めて感情を爆発させます。収めに入った子供たちが、それぞれ自分の伴侶と連れ立つ中、二人だけ残った夫婦。この描き方は秀逸でした。「私まだ元気よ。もう一人子供を産もうか?」と、夫の気持ちをなだめる為に冗談を飛ばす妻に、笑う父。あんたのせいで、息子は死んだ!と、詰め寄った日もあったろうに。妻たるもの、常に明るくなければと、痛感しました。家族は夫婦で始まり、夫婦で終わるのです。

静花は哲男と北朝鮮、梨花は常連客と韓国へ。美花は夫の親と同居。未知の世界へ旅立つ娘たちに、「バラバラになっても、自分たちは家族」との言葉を、娘たちの餞にします。優しい静花は泣きながら、気の強い梨花は笑顔で、母と抱擁する姿が、麗しい。ラストシーンでも、まだ笑わせてくれる母。老け込んだら、あかんで。私の一人くらい養ってや、と言う意味ですね。

とにかくキム・サンホとイ・ジョンウンが上手い!日本の役者でも上手く演じる人はたくさんいるでしょうが、魂レベルの演技です。この人たち、まだ50前なのに、何でこんなに上手く当時の一世を再現できるのか不思議。特にジョンウンは最強(笑)。あんなオバチャン、私の子供の頃は、いっぱい居ましたよ。「パッチギ!」のキムラ緑子にも唸りましたが、本場はやっぱりモノが違いました。

予告編では危惧した大泉洋でしたが、今もミスキャストだとは思いますが、意外と好演でした。大阪弁も上手かったしね。真木よう子は、いつもの彼女とは違い、情念を胸に秘め、長女らしさの良く出た演技でした。井上真央も、気の強い梨花の寂しさを、時には官能的な演技で好演。夫によると、食べ方に育ちの悪さ出て、良かったとか(笑)。桜庭みなみも、私は清純な彼女しか知らなくて、蓮っ葉な美花を弾けた演技で好演して、びっくり。一番在日らしく見えたのは、彼女でした。

苦言を言えば、焼肉屋が舞台なのに、料理があまり出てこなかった事。出てきても、あまり美味しそうに見えなかったし。私はゴマの葉の漬物が好きなのですが、出てこなかったので、昨日自分で漬けました(笑)。

笑って笑って泣いて泣いて観た作品。1を描けば10解る私と違い、日本の方々には、笑って貰うだけでもいいです。ついでに、一世は大変やったんやなぁと、思っていただければ、大変嬉しい作品です。

07月04日(水)
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