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ケイケイの映画日記
by ケイケイ
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■「市子」
北(森永悠)の市子への愛情は、自己愛に近いのでないかな?執着の愛が、キキ(中田青渚)という、初めて出来た市子の友達から遠ざけてしまう。嘘は一つ付くと、また次の嘘を言わなければならず、それに疲れてしまうのでしょう。なら義則なら?義則であったなら、市子に自首を薦めていたのではないか?一つ目の罪、二つ目の罪、犯した後に出会ったのが義則なら、市子の人生も変わったように思います。人生のタイミングは難しい。
あの時逃げなければ、市子は最後の罪を犯さず済んだのに。今までの誰かの為、偶発的な罪ではなく、明確な殺意を抱いていての犯行。「お前は悪魔や」。そうなるように仕向けられ、乗ってしまった市子。義則と暮らしていた時の市子とは、明確に決別するのでしょう。
多くの方が書いておられるように、杉咲花が絶品。清楚で愛らしい彼女が演じる事で、市子の痛ましさが、より強く感じられました。これから期待大の大器だと思います。あまり話題になっていませんが、中村ゆりも、大変良かったです。脆くて美しく愚かな母。この手の母親は、下手すると知的障害のボーダーに見えがちですが、普通の母親として造形しています。
DVや借金など、ダメな男を転々としているなつみは、彼女の生い立ちにも何かあるのかと思わせます。DVで身を隠すしかなかったのは、頼る親族もなかったのでしょう。なつみなりの娘を思う気持ちが現れる、義則を見送るシーンでは、無性に涙が出ました。彼女も私も、同じ母親なのです。見下げる気持ちなど毛頭なく、身近になつみがいたら、私は彼女を助けたい。
還暦を超えて思うのは、人生に四面楚歌はない、です。どうしようもない時には、恥を忍んで大声で助けを求めるのよ。誰でもいい。見知らぬ人でもいい。勇気の要る事です。叫び続ければ、必ず誰かが手を差し伸べます。そして行政に繋いで下さい。私は助けて下さい!と、なつみや市子から言われる人になりたいと、心からそう思います。
03月20日(水)
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