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ケイケイの映画日記
by ケイケイ
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■「ゴールドボーイ」


面白く観ました。作品のキャラの背景もそれなりに咀嚼出来たし。なのに、なんだろう、この飲み込んだ錠剤が、喉の辺りに引っ掛かっている感じは。決して散漫ではないけれど、色々詰め込み過ぎて、描き込みが少し足りないと感じていました。それが、敬愛する長年の映画友達の方と、少しだけお話しして、傍と気が付きました。視点を変えれば、描き込み不足ではなく、膨大な原作を129分の尺に、必死で形を成すように、上手くまとめたのじゃなかろうか?です。監督は金子修介。

沖縄の実業家の一家に入り婿している東昇(岡田将生)。その財産と会社の乗っ取りを目論んで、義理の両親を崖から突き落とし、殺害します。それを偶然録画していた、朝陽(羽村仁成)、夏月(星乃あんな)、浩(前出燿志)の三人の中学生。それぞれが複雑な家庭環境に苦悩しており、朝陽はこれをネタに、昇を強請ろうと言い出します。

原作は中国の小説で、ドラマも好評だそうです。沖縄に場所を据えたのは、子供たちと昇らの貧富の差や、警察の腐敗をより強調したかったからかと思いました。沖縄の人、ごめんなさい。あくまで私の沖縄のイメージです。それにしては、あまり沖縄を強く感じる風景ではなかったですが。東家の一人娘で昇の妻である静(松井玲奈)は、従兄で刑事の巌(江口洋介)に、自分が死んだら昇を疑えと言います。

まぁその通りになるわけですが、死因は家名を汚すため公表出来ない件は、無理くり許そう。だけど、公表できないからと、捜査を打ち切るのはどうなんだろう?極秘で捜査は続けられると思います。「沖縄だから許して」は、違う気がします。

朝陽の両親は父の一平(北村一輝)の不倫略奪婚により離婚しており、母の香(黒木華)が、女手一つで育てています。朝日の教育費を稼ぐため、掛け持ちで仕事をして、夜勤もこなす香。いやいや、待て。夫有責で離婚でしょう?
一平は会社を経営しており、裕福な様子。それなりの慰謝料や養育費は払ってしかるべしです。何故そんなに貧乏なの?一平は朝陽に「進学費用は心配しなくていいから」と言いますが、何当たり前の事を、今更言ってんの?しかし現実は、元妻は働きづめ。そしてたった一人の実子である朝陽(略奪ゴミ女は、女子を連れ子にして再婚)は、母の旧姓を名乗っているので、戸籍も抜けているのでしょう。跡継ぎとして、養育は元妻でも、戸籍はそのままにして、将来会社は継がしたいのでは?この辺りの描写は、とても雑に思いました。

こういう細部は、バッサリ刈り取って、現在母子家庭でお金に窮しているとだけ描いても、良かった気がします。余計な事で気が削がれました。両親の離婚は、朝陽に影を落とす事象なので、本筋に絡む事だけ描けば良かったと思います。もちろん、連れ子の件は忘れずに。

と、色々苦言を書きましたが、その他は匂わせ方が上手かったです。例えば、血の繋がらない兄妹である浩と夏月ですが、罪を問われるだろう夏月と共に浩が逃げたのは、彼女が好きだったからでしょう。恋が芽生え始めの朝陽と夏月を、そっと見守るような様子が切なかったです。なさぬ仲の娘に手を出すゴミカスの浩の父親、「お母さん、(義理の)お父さんが死んだら、また一人になる」の夏月の心配も、夏月の母親の、親としての脆弱さを感じ、この兄妹の家庭環境の過酷さは、これらの描写だけで充分に感じました。

静の不倫相手を見せるのも、素行の良からぬお嬢様だと感じさせます。だから親は、離婚話も止めたのでしょう。家名を守るには、頭脳明晰、眉目秀麗な婿殿が必要だったんですね。この時「この人はね、心が無いのよ!」と静は叫びます。心が無いというのは、「良心」が無いという意味です。サイコパスの特徴です。やはり妻です。夫の内面を感じていたののでしょう。

崖から突き落とす時、あら、あら〜!みたいな間合いで、淡々と突き落として、呆気に取られました。カジュアルに殺人を犯すのです。憎しみも恐れもなく、何の感情も無く殺す。その他の殺人場面も、流血があってもほぼ即死。阿鼻叫喚には程遠く、それがとても怖い。


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03月17日(日)
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