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ケイケイの映画日記
by ケイケイ
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■「37セカンズ」
ユマは身だしなみ良く、優しく綺麗な言葉づかいで、他者に礼節を尽くします。そして遅ればせながら、反抗期も来た。これはお母さんの努力の賜物では?守るも攻めるも、私なんか足元にも及ばない、両方立派な子育てだと思う。

ユマのお母さんの呪縛を取り除けるのは、私は別れた父親だったと思います。きっと優しく繊細な人だったのでしょう。でも障害児が生まれたら、それだけではダメなのだと思う。一番に必要なのは、強さだと思う。妻が耳を傾けず頑ななら、それ以上に頑固になって、「別れない」と言えば済むことだと、私は思います。

「ある人」から、ユマは自分の存在が、詐取する側であったと、初めて認識します。そのことで、きっとお母さんへの心の底からの感謝が湧いたのじゃないかしら?友人に自分の書いた漫画を乗っ取られ、詐取される側であったユマ。この冒険で、今まではわからなかった友情、血縁など、色々学んだと思います。

佳山明が圧巻。芝居が上手とか下手とか、そんなのどうでもいいんだよ。この子の存在こそが、この作品の光です。神野三鈴も素晴らしい。ユマの冒険土産を見たとき、嗚咽しながら、一粒一粒涙を流す様子を見て、私が号泣しました。きっと泣く事すら律していたんだと思います。障害児を持って、卑屈になるシーンもありましたが、あなたが育てから、こんな良い子に育ったんです。私はこのお母さんの味方でありたい。

渡辺真紀子のさばけた風俗嬢も大変良かった。セリフの一つ一つ、みんな平凡なんだけど、彼女が言うと言霊が宿る。板谷由夏の編集長も、きびきび颯爽としていました。ユマが冒険の切欠を作ってくれた彼女に感謝しに行くと、満面の笑みで「やったの?」と聞いた時は、笑いました。この人たちと女子会したら、楽しいだろうなぁ。ユマのお母さんも入れてあげてね。

後半、旅券はどうした?何故外国?介護士の大東駿介は、こんなに仕事休んでいいいの?とか、突っ込み満載ですが、私が貰った勇気や感動からしたら、米粒みたいなもんです。なので不問。あっ、大東駿介と恋仲にならなかったのは、大変良かったです!

ユマの明るい未来を感じさせる笑顔に、電波系のエンディング曲が花を添えます。冒頭からは、こんな曲で一緒に乗れるなんて、想像できませんでした。何度でも書きます。今年どころか、映画史に残る作品だと思います。どうぞお見逃しなく。

02月16日(日)
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