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ケイケイの映画日記
by ケイケイ
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■「火口のふたり」
他の女性と関係を持った時、死ぬんだと直子を呼び出した賢治。その事を感じ取り、就職先が決まっていたのに、秋田に帰った直子。その女性とデキ婚したものの、浮気であっさり離婚した賢治。彼は絶倫でも浮気者でもないです。直子より愛せる女性、直子より肌の合う女性を求めて、直子を忘れたかったんじゃないかなぁ。誰よりも直子を愛して、誰より直子が怖かった賢治。彼は直子から逃げたのでしょう。賢治は離婚以降、セックスしていませんでした。

直子は故郷に帰ってすぐは、誰彼なしに寝ていたと言う。賢治と同じ理由でしょう。それが同僚の紹介で結婚しようと思ったのは、子供を産みたかったから。この二人、子供がキーワードなんですね。直子が賢治と違うのは、賢治が怖かったのではなく、あきらめだと思います。

離婚後、たまにアルバイトするくらいで、四年間隠遁生活をしている賢治。預貯金はあると言っているので(養育費も送っているでしょう)、それなりに良いお給料があったのでしょう。そして直子も、折角の資格を無駄にして、今は契約社員で事務をしています。別れた事で、人生が狂ってしまったんだな。

鑑賞前は、身体の相性が良いため、別れられない男女を描いていると思っていました。しかしセックスだけではなく、会話や食事、睡眠や病気。全ての様子から、私が痛感したのは、別ち難い男女の強い愛情です。セックスはその愛情表現の一つであるだけ。愛があるから、誰より良いのだと思います。

このまま切ない思いを抱いて、二人はどうなるのだろうと、センチメンタルな気持ちでいると、あっと驚く大逆転。婚約者が自衛隊のエリートであるというのが、こういう風に使われるなんて。ラストの賢治の「中出ししていい?」と言う台詞、もう泣けて(実話)。劇中初めての男らしさでした。まさかこの形でハッピーエンドに終るとは、想像できませんでした。

出てくるのは、この二人だけ。出ずっぱりで大変だったでしょうけど、ユーモアがあり健康的にさえ感じたのは、二人が若かったせいだけではないです。全裸で頑張って好演したんだもん、是非賞取りレースに参戦させてあげたいです。

私が一番好きなシーンは、バスタブに浸かった二人のシーン。後ろから賢治に抱きすくめられていた直子は、どのセックスシーンよりも、賢治に「抱かれて」いたと思います。身体を通じて、直子は心を抱かれていたのでしょう。セックスをテーマにする凡百の作品群とは、一味も二味も違う、濃密で爽快な作品でした。賢治も直子も、幸せになってね。

09月15日(日)
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