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ケイケイの映画日記
by ケイケイ
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■「東京難民」
うちの息子たち三人は既に社会人ですが、修のような事が学生時代に起こったら、どうしたでしょう?一目散に義兄の家に行ったはずです。義妹もいるし、私の妹もいる。どの家も暖かく迎えてくれるはずです。逆の立場であっても、夫も私もそうするでしょう。そう言い切れるまでには、長い年月、お互いが努力して積み上げてきた信頼関係があります。頑張ってきて良かったなと、つくづく思いました。今までの佐々部作品と違うのは、画面で全て画面で描いてしまうのではなく、こちらに想起させてくれるという点です。

どんな人もそこに至るまでには、そうなる理由があるのです。理由を全く描かないのに、そう感じさせてくれた井上順は絶品でした。何十年と第一線で活躍する人は、やはり年季が違うのだと痛感しました。金子ノブアキ扮するホストクラブの経営者しかり。非情な彼にも、修のような過去があったかも知れない。冒頭の「あいつはもう終わっている」という場面は、途中でまた繰り返されますが、二回目は温情に私には聞こえました。勝ちもせず、さりとて負けもせず。仕切り直しの第一歩を踏みしめる修の人生が、穏やかなものである事を、願わずにはいられません。

03月08日(土)
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