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ケイケイの映画日記
by ケイケイ
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■「くちづけ」
そしてもう一箇所、うーやんが「僕のために智ちゃん結婚出来ないの?」と泣いた場面。何もわからないだろうと思われている彼らですが、自分が家族の厄介者であるとは、充分認識しています。誰も悪く無いのです。しかし私はホームに兄を預けながら、再々面会に来る智ちゃんは、家族として理想的だと思っていたのに、物語はあらぬ方向へ。

いっぽんは重篤な病にかかり、余命わずかですが、誰にも言いません。秘密を隠して、自分が死んだ後の事を考えてマコを施設に入れますが、彼女は馴染む事が出来ません。先行きを悲観したいっぽんは、マコを絞殺してしまいます。「マコ、いっぽんがいないと生きていけないから、いっぽんが死んだら、マコも死ぬ」。この言葉は、いっぽんが自分を奮い立たせるため、娘に言い続けた言葉なのでしょう。ここまでいっぽんを追い込んだのは、障害者は家族で看るのが幸せと言う、社会的な固定観念や美徳感なのかと思いました。智ちゃんの決断、国村先生の励ましのは、言いたくても言えなかった、いっぽんの無念さを際立たせるためだったと思いました。

ひまわり荘は住人の退去などで、財政が逼迫して閉館となりました。個人の志に頼っているだけでは、いけないのだと痛感します。ラストに見せるいっぽんとマコちゃんの歴史。その笑顔は、決していっぽんの行動を肯定してはいないと感じました。二人のこの笑顔を永遠にするには、どうすれば良かったのか?それを観客に問うていたと思います。普段なかなか想起しない、成人した知的障害者、及びその家族の幸せを考えるきっかけとなる作品で、じっくり誰かと語り合いたくなる作品です。

05月30日(木)
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