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ケイケイの映画日記
by ケイケイ
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■「JUNO/ジュノ」
そして情けなくもリアリティがあったのが、マークです。女性はつわりなどの体調変化、せり出すお腹、お腹をけっ飛ばす赤ちゃんの様子で、段々と母親になる準備ができるものです(なのでそれがないヴァネッサが、自分が母親になれるだろうか?と、異常に神経質になるのも、良く理解出来るのです)。しかし父親は、妊娠中はおろか、生まれたって正直それほど「俺の子!」という思いが湧かない人は、多いんじゃないでしょうか?ましてや里子をもらって父親の責任を果たすなんて、自分には荷が重すぎると、逃げ腰になるのもわかる気がします。良い悪いではなく、属性の違いでしょうか?
辛辣に言うと幼稚性なのでしょうが、ベイトマンのオタッキーな様子が愛嬌があるので、素直に受け取ることが出来ました。

で、これだけ楽しく観ているのに、何故私がバッテンつけたい気になったのかと言うと・・・・

以下ネタバレ





























ジュノは一貫して、自分で子供を育てる気にはならないのです。この辺は、最初は中絶希望→やっぱり産みたい→両親に告白→ジュノ、養子に出したい→両親承諾。養子縁組の相手との契約の席は、父親も同席。

と言う流れで、全然迷いが生じないのが、私には疑問がいっぱい。私が短大の時の英会話の先生は、カナダ人でした。二人実子がいましたが、「我が家にはもう一人子供を育てる余裕があり、欲しかったのだが出来なかった。なので養子をもらった」というお話をして下さった記憶があります。養育出来ない家庭を知らない子を、養育できる環境が整っている家庭が引き受けるのは、当たり前のことだ、とも仰って、若い私はその心根に痛く感激した記憶があります(ちなみに養子は日本人)。

なので欧米では、養子に出すということは、ありふれたことだという認識がありました。ただし、「養育出来ない家庭」です。ジュノ自身は高校生ですが、家庭は平均的な家のようで、両親とも仕事を持っており、さほど生活が苦しそうではありません。養子をもらうのもありふれたことなら、尚更自分たちが援助して、娘の子供を育てようとは、何故この両親も思わなかったのが不思議です。幸い日本なら退学モノでしょうが、ジュノは大きなお腹を抱えて通学もしています。妊娠出産は周知の事実のはずで、隠し事ではないはずです。

ポーリーの両親に知らせないのも謎。確かに男の責任の取れる年齢ではありませんが、妊娠の半分の責任は、当然彼にあります。まだ責任の取れない年齢なら、保護者に伝えてしかるべきです。ジュノはポーリーの母親を嫌っていますが、そこは常識と現実を教えるのが親のはず。娘の気持ちを尊重してなら、親も幼稚です。ポーリーの親が知ったら、自分たちが育てたいというかも知れないでしょ?言える権利は、彼らにもあるはずです。だって子供はポーリーの子供なのですから。ポーリーがジュノに、「僕の気持ちを踏みにじった」と言いますが、それはジュノが心にもないこと彼に告げたためですが、それ以外も一見全部自分だけでしょいこんでいる風ですが、私にはジュノは、かなり勝手な子だと言う風に観えました。

なので出産後のジュノの涙も、私にはただの感傷に見えてしまい、自分のしたことの意味が、本当にわかっているのか?と疑問に感じました。そしてラストのあまりの軽さにも絶句。二人は本格的に付き合うのはいいのですが、それならヴァネッサに渡した赤ちゃんは?それこそ一生忘れられるものではないでしょう。そのことには全く触れていません。

何も家族崩壊するほど大ゲンカし、子供恋しさに泣き叫べとは言いません。仮に親に説得されて養子に出したとしても、ジュノが自分で子供を育てたいと思う場面があったなら、私のこの作品の評価は、正反対になっていたと思います。確かに出来は良いのですが、私はこの作品を好きになれません。
ジュノが生んだ子を始めて抱くヴァネッサが、「私はどう観える?」と、ジュノの継母に聞くと、彼女は微笑んで「新米ママに観えるわ」と答えます。このデリケートな子供への思いの描写が、ジュノにも欲しかったです。

06月21日(土)
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