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ケイケイの映画日記
by ケイケイ
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■「パンズ・ラビリンス」
ラビリンスでの場面は、まさにダークなファンタジックさで、妖精やクリーチャーの造形も愛らしいとは言えず、少しホラーめいていました。パンと二番目の印象的なクリーチャーを演じるのは、なんと「ヘルボーイ」で、インテリかつ優雅な風情がとっても素敵な、半漁人のエイブを演じていたダグ・ジョーンズと知り、すっかり嬉しくなりました。エレガントで陽気だったエイブと比べると、今回はやや悪役ですが、この作品の狂言回し的なパンを印象深く演じています。
作品の終焉が近づくにつれ、作り手の意図が明確に顔を出します。しかしその意図は、観る人により様々だと思います。私は思いもかけないオフェリアの行く末に狼狽しました。そして次々と過去の情景が浮かぶのです。オフェリアが最初からパンに対し平静でいられたこと、恐ろしいクリーチャーにもそれほど恐れているように思えなかったこと、そしてメルセデスの言葉です。「私は母から、パンに出会ってもついて行ってはダメと言われたわ」と言う言葉。過酷な境遇を乗り越えるため、幼いオフェリアが自分に課した戦いだったのだと思うと本当に辛く、胸をつかれました。と同時に、辛さだけではない幸福感も漂わせる幕切れはお見事で、きっと語り継がれるラストになるかと思います。
メルセデスもオフェリアも命がけで弟を守る姿に、表裏一体のような魂の繋がりを感じました。か弱いカルメンには、それに相応しい行く末が用意されていましたが、そこに赦しを感じ深い感慨を残します。ファンタジーというカテゴリーで、これほど深く現実を表現し感動させる作品は、今まで観た記憶がありません。独裁政権の様子はかなり血生臭く、そういう描写が苦手な方には辛いシーンもありますが、そう言う場面は目をつぶっていただいてもいいので、是非ご覧頂けたらと思います。
10月14日(日)
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