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ケイケイの映画日記
by ケイケイ
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■「サウスバウンド」


今年70本目の作品。普通の人に比べれば遥かに多い鑑賞数ですが、こういう映画の感想文サイトの管理人としては、少し物足らない本数です。しかし月7〜8本ペースというのは、人が思うほど手当たり次第と言う訳ではなく、自分なりに厳選して観ているもので、そのせいか今年はあまり外した作品はありません。この作品も当初は観る気満々、しかし伝え聞く評判の悪さに止めようと思っていました。でももしかして面白いかも?私にはイケるかも?という想いはぬぐい切れず、結局久々のギャンブル気分で観ました。監督は玉石ごろごろ、何が出てくるかわからない森田芳光。

東京は浅草に住む小学校六年生の上原二郎(田辺修斗)。父一郎(豊川悦史)母さくら(天海祐希)姉洋子(北川景子)妹桃子(松本梨菜)の五人暮らし。父一郎は元学生運動の過激派で、現在は無職。母さくらの営む喫茶店で生計を立てています。一郎は社会制度に対して反骨心旺盛、常に破天荒な言動で、思春期の二郎を悩まします。とある暴力事件に二郎がかかわり、そのことが原因で都会生活にいやけがさしたさくらの提案で、家族は成人した洋子を残し、一郎の故郷・沖縄の西表島に移住することにします。

前半の東京パートは全然OK。最初二郎の先生(村井美樹)が、あまりにわざとらしいフリと笑顔なのが、こんな先生いるかよ!と気持ち悪かった以外は、楽しく観られました。確かに一郎の言動は常識からはみ出していますが、観ていて少々痛快です。「年金なんか払うか!」と一喝しますが、時節柄年金払ってくれとやってくる方が非常識なんじゃないの?と思うし、修学旅行の積立金に、学校と旅行会社の癒着を感じると学校へ乗り込む姿はカッコイイです。確かに子供たちにははた迷惑な父親だとは思いますが、しっかり妻子を愛しているのが感じられるのがポイント高し。ある意味頼りがいもあり、これなら妻が喜んでついていくのもわかります。無職というのはミソをつけますが、これだって夫婦で納得済みならいいんじゃないでしょうか?ヒモ夫が困るのは、妻が働いて欲しいと思っているの、にぐうたらしているケースだと思います。

体格にも差があって、本当に子供っぽい子から二郎の様に少年に移行している子など様々なんですが、いちように思春期に入り、色気づきはじめる少年少女たちの描写が楽しく微笑ましいです。そしていじめの描写が生々しい。中学生の子が小学生の子を手下にして恐喝したりは、私も聞いたことのある事実です。父親に知れると大ごとになるとわかっている二郎はさておき、他の子たちも誰も親にも先生にも相談しません。事後にのこのこ出てくる校長(平田満)などの全く的外れの指導の仕方を見ると、これは助けを求めても無駄だと思ってるんだとわかります。今時「母子家庭=問題ありの家庭」なんて、他の父兄の前で言う教師なんかいるか?親として大人として本当に情けない気持ちになりますが、でも実際はあんなんじゃありません。マスコミにデカデカと連日困った教師の記事が出ますが、現役中三生の母の私の実感としては、圧倒的に生徒のために頑張る先生の方が多いです。この辺は父一郎の反骨心を正当化するため、教師=体制側として、わからずやに描いているのでしょうが、子どもたちの日常の描き方のリアリティに比べて、これでは少々不満が残りました。

まずまずだった東京パートですが、これが西表島に移住するところから、個人的に違和感がくすぶってきます。二郎のごたごたが原因で、母の提案での沖縄行きです。父一郎の故郷ということで、辻妻は合いますが、正直実際に子育てしている身からすると、これくらいで?という気がします。もっと葛藤があったり、周囲の人との衝突の描き方に工夫がなければ、周囲と自分たち夫婦の意見が合わないから、さっさと沖縄に逃げたように私は感じました。この描き方では親として幼稚です。


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10月09日(火)
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