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ケイケイの映画日記
by ケイケイ
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■「ラストキング・オブ・スコットランド」
暴君の様相を呈してからのアミンは、チラチラ映る殺戮場面が、猟奇的に映すよりも恐ろしく、いつもより黒めにドーランを塗ったウィッテカーの容姿から、まるで妖気が漂うようです。彼の大きな体は、いつもは森のプーさんのような安心感を与えるのですが、今回はもう怖い怖い。アミンから逃れようとするニコラスを描くのですが、ニコラスの全てを逃すまいとするアミンやその側近たちの様子が細かく描きこまれ、こんなに緊張したスリリングな感覚は久しぶりで、アミンの伝記を観に来たつもりだったのに、意外な後半のサスペンスフルな展開は、とても楽しめます。

その恐ろしいアミンですが、強い猜疑心は幼児のように描かれます。幼児のような人が多大な権力を持つ恐ろしさを背筋が凍るように描いていますが、権力者の孤独は、絶対的な信用の置ける優秀な側近の存在で、まぬがれるのではないかと感じました。かつて名を残した権力者には、必ず名参謀がいましたよね。権力者の狂気を描くことで孤独を浮かび上がらせるのに成功したのは、ウィッテカーの好演あってこそです。

ウィッテカーはすでに書きましたが、ニコラスを演じるジェームズ・マカヴォイは、見たことあるなぁと思いつつ、帰ってから調べると、何とあの「ナルニヤ国物語」のタムナスさんではありませんか!70年代のイギリス青年は、本当にあんな髪型でちょっとハンサムと言う感じの人が多かったです。今回性格は明るく素直、でも思慮が足りない若々しいニコラスを演じて、私はとても良かったと思います。どうして各賞の助演男優賞に無視されているのか、とても不思議です。私はお気に入りになりました。

自分の命に代えてもウガンダを救いたい、憂国の士が出てきます。彼はステイタスの高い仕事を持ち、国ではインテリ層でしょう。彼のニコラスに託す言葉に、「ナイロビの蜂」でも描かれた、根深いアフリカ諸国に君臨する白人社会の罪深さを感じます。今後の心あるハリウッドの映画の、新たなテーマになる予感です。この作品で描かれるサラやその夫である医師のような、心ある白人もたくさんいるのですから。

03月15日(木)
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