(SleepWalking)



くるぶし
 

体育の後の


机の脚に引っ掛けられたアンクル・ソックスと


素足で上履きを履いた貴方の


細くて丈夫そうなくるぶしに気付いて


あのひとの言葉を思い出す


肩から腰におちる制服のラインと


そのまま流れていく脚のニュアンスに


他の誰かは気付いているかしらん


と少し考えて


抜け出せなくなっている


恋をするのに理由をつけるのは簡単だけど


もしあたしがそのくるぶしに惚れたといったら


あのひとは笑うだろうか。

2003年12月19日(金)


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cos30°
 

あたしはあたしが卑怯な人間だって知っているから


今もこうして見詰めているわけで


偶に後ろを振り返るあなたのすっとした鼻に


気付いて動揺している


あたしとあなたと彼とを結ぶと


(あなた―彼)/cos30°=(あなた―あたし)になって


だからきっとあなたはあたしに気付かない


彼は気付いているけれど


だけどたまには良いじゃない


あたしは陽だまりの中


ストーブの熱風に茹で上がった教室の隅っこで


頬を赤らめてのぼせている


ときどき振り向くあなたを期待しながら


甘すぎる光の下で。

2003年12月21日(日)


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くちびる
 

あぁ


きっとあなたはあたしよりも女らしい


と偶に思う


白い肌と


黒い髪と


赤い唇と


なんて


まるで白雪姫じゃないか





考えて混乱する


背は高いけれども


お姫様みたいだ


ならば仕方が無い


あたしが王子になるしかない





思って困惑する


そうだ


あたしと姫は


まだ出会ってはいないのだった


あたしが耳にするどこの噂話にもあなたは


現れてこないから。

2003年12月25日(木)


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最期
 


せめてあたしが死ぬ時くらい


ギリギリの位置で


あたしを憎いと


言って欲しかった


あなたのやさしさなんて


死んでゆくあたしには必要ないの


最期くらいあたしに


綺麗な花を飾って欲しかった


甘い嫉妬の蜜を持った


真っ赤な花を。





さよなら


あたしは


あなた無しでも


生きてゆけるのです


さよなら


あたしは


あたしだけで


生きてゆくのです。



2004年01月03日(土)


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ことばすくなくても
 

ひとつ、あなたに


あたしもよぶんなものだった?と


といたい


そんなことにはなんの


いみもないけど。

2004年01月04日(日)


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右手中指
 

今日の朝


気付いたら


右手中指の爪 が 割れていて


放っておいたら同じ爪の


反対側からも亀裂が入ってしまった


あぁ


あたしと爪は繋がっているのだ


ひとつ 破られてしまうと


すべて 毀れていく


あたしはそういうものなのだと思う


爪切りを取り出して


傷を隠してしまえ


あたしの右手中指の爪 は


もう


切りたての、美しい爪だ


これで二度と あなたを


傷つけたりは出来ないだろう


たぶん、ね。

2004年01月05日(月)


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いらない
 

はやくしんでしまいたい


とつぶやいたあたしを、あなたは


柔らかく、叩いた。


そんなこというもんじゃない。


あたしは、あなたはしにたいと思ったことが無いから


そんなことが言えるのだとおもう


しにたいひとのきもちなんて


しにたいと思っていないひとには


解りやしないんだわ


だけど


あなたが叩いたあたしの肌は、


あわくそまってあたたかくうずくから


あたしまた、いきていてもいいかなっておもってしまうの


だってあなた


あたしがいきていればまだ


触ってくれるんでしょう?


ほかになにも


くれないならアイだってほしがったりしない


いらないから


せめて、あたしに


触れてください。

2004年01月07日(水)


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