f_の日記
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 祖母

祖母は、
はやく死にたいと云います。

だから僕は、
長生きしような、と云います。

そしたら祖母は照れながら、
とても嬉しそうな顔で、
後のモンが困るでなぁ。

そしてまた云います。
はやく死のうと思っても、
なかなか思うようにいかんでなぁ。

そして僕もまた、
長生きしような、と云うのです。

2002年06月28日(金)



 自由

ヒトはどこまでも、
自由で、

でも、
ひとりで生み出せるものは、
ほんの少しなのかも知れない。

誰のせいにもしたくないから、
僕は理由を云わないよ。
それはホントはウソだから、
逢いたいなんて、
考えないよ。

僕も自由の、
ひとかけら、

僕の自由の、
ひとかけら。

2002年07月09日(火)



 或る夜

駐屯地のように柵でおおわれたそれは、
雨の中静かにアスファルトを照らしていた。

その事件をおこしたのは、
なんだか自分でもあるような気がしたり、
死んでいった子供たちも、
自分であるような、
そんな気がしたり。

ワイパーがそんな考えをよけいに錯綜させ、

雫がふと、
人の涙のように見え、
僕はその先を見つめようと、

心を研ぎ澄ます。

2002年07月21日(日)



 窓にとまった蝉の

窓にとまった蝉の
夏が終われば
干涸らびる様の

毎年のこと違うこと

祭りのあとの散らかった公園
人目を避けた冒険と逃避行

きっといいことがあるだろか
毎年のこと違うこと

2002年07月27日(土)



 花火大会

川べりまで行かなくて、
ちょっとウチをでたあたり、

誰が決めたのでもなく、
同じ方を向いていて、

僕は興味がないんだけど、
それが少し心をやわらかくする。

誰が決めたのでもなく、
経常利益でもなく、

どこかで宇宙人が、
首をかしげていたりして、

それがなんだか、
心をやわらかくする。

2002年08月17日(土)



 神戸。

人の記憶は曖昧で、

自然に操作して、
いい思い出に作りかえるなんて、
どこかで聞いたけど、

それは冬山の頂上にたどりついたような、
そんな一つの成長なのかも知れない。

なんてことを考えながら、
パオをほおばり麺をすする。

少し変わったけど、
同じ匂いにくすぐられながら。


南京町にて。

2002年10月05日(土)



 

久しぶりの携帯、

「恋に溺れてました」

照れながら話す友人の君へ、

何かをちょっと分けてもらった気がして、

僕もちょっと、
幸せだったよ。


どんなに悲しみの深淵にいても、
どれほど恨みを重ねてみても、
恋をしたり、
歌を歌うそのほんの一瞬間を、

信じることは、
それほど罪だろうか。

2002年11月13日(水)
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