デイドリーム ビリーバー
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2002年02月10日(日) 散歩

冗談じゃないです、まったく。
いや、彼が無事だったのはよかったんだけど。

次の日
「なんとか生きてます」って電話きたけど、かなり辛そうで
少ししか話せなくて、様態を詳しくきくこともできなくて

「連絡遅くなってごめんな」って言われて、泣けてきて
更に「ごめんな、さみしかった?」って

「さみしかった」!?
私はそんなコドモじゃないっつうの!
死んじゃったんじゃないかって
意識不明になってるんじゃないかって
苦しんでるんじゃないかって

ただ心配だっただけで


ああでも、
こんな大暴走は、完全にオコサマのなぜる技だわ、とか思いつつ
「無事ならそれでいいの。もういいから、無理しないで、休んで」
ってちょっと大人ぶって言ったら
「ありがとな。早く元気になるから、そしたらえっちなことしような」
って言って、
「こら!なに言ってんの!」って、また私を笑わせて

彼も少し笑っていて

声にはまったく元気がないくせに。
彼は優しい。そして強い。

小さいことでくよくよしたりしない。
深刻になりすぎない。
「俺らが笑って仲良くいられたら、たいていの問題はクリアできるやろ」
って、以前元気をなくしたときに、言われたのを思い出す。


彼はよく笑う。
そして、よく笑わせる。

一方、私は
連絡とれないだけで、泣いて
へんな夢見て、また泣いて

冗談じゃないです、まったく。
情けなさすぎます。


仕事休みだったので、頭冷そうと思って、ひとりで一日散歩した。

寒かったけど、
高い空とか、木の枝とか、歩く猫とか、水溜りとか。
そう言えば、私、散歩が好きだったんだ。
最近は、仕事の合間をぬっては、少しの時間でも彼と会っていたから
すっかり忘れていた。

隣にだれもいなくて、私の両側を風が吹く感じも
すっかり忘れていた。


彼に恋する前の私は、
人恋しくなる日もたまにはあったけど
恋人がいなくてつらいと思ったことはなかった。

むしろ、この、一人で散歩するときの、
感覚が冴え渡るような、研ぎ澄まされるような
贅沢な時間が大好きだった。

私は、この星を一人で歩いているって考えたら
自分がものすごく自由な存在である気がして
愛と冒険にあふれる未来が待っている気がして
鳥肌がたつみたいに気持ちよかった。

私たちが出会う前、
彼も彼女と幸せだったかもしれないけど
私も負けないぐらい、一人で幸せだった、
そんな単純なことを思い出したり。


こんなふうに時々は、意識して
一人の時間を持ったほうがいいのかもしれない。

気分が良かったので
「メールの返信は無理しなくていいからね。
 ちょっと元気になって、寝るのに飽きたら読んでください」
って、前置きして、メール連打してやった。連打ってほどでもないか。

笑えるネタをさがして。
もう、売れないお笑い芸人の気分で
数打ちゃあたるみたいに、レベル低いのも送ってやった。

さすがにネタも尽きてきて
初めて顔文字なるものにトライしてみたら、結構楽しくて
ちゅーしてる顔、送ってみた。

返事はあいかわらず来なかったけど

だいぶたって
ちゅーの顔、3パターン目ぐらいを送った頃

「大好きー」
って、ひとことだけ返ってきて

幸せすぎてくらくらして
散歩を続けていたら怪しい人に思われるんじゃないかってくらい
顔がどうしようもなく笑ってしまうので
しばらくその辺に座って、酔いをさます。



こんな一言だけのメールで、贅沢な一人の時間も狂わされる。
彼はまだ、調子悪くて寝ているっていうのに。

まったく、いかれてる。
でも、いかれた私もかなりおもしろい。


2002年02月07日(木) レンラク

彼と連絡がとれない。

いつもだったら、先に起きた方が、おはようメールして
その後も数通は、メールのやり取りがあるのに。


事故?

これを考え出すと、とまらない。
ぐるぐるぐるぐる。
やばい。

そんなふうにぐるぐるしていたら、昼過ぎに1通だけきた。
「仕事休んだ。具合悪いので、病院いきます」
って、それだけ。
いつもなら、ついているはずのエロネタがない。
こんな事務的なのは、はじめて。

本当に具合悪いのかも。

そういえば、このあいだ
彼、頭打ったんです。結構はげしく。
「あとで急に倒れる人いるんだよ。病院いきなよ」って言ったら
「あー、俺もう死ぬわー。ばいばーい」って、笑っていた。


午後、あまりコウルサイのもなぁと思って
「しんどかったら“無事”のひとことでもいいから、メールください」
って送ったけど、やっぱりなしのつぶて。
電話もつながらない。


彼が倒れたとして、
意識不明だったり、死んじゃったりしたとして
その連絡は、私にくるんだろうか。

彼の家族は、まだ、彼女とつきあっていると思っているから
彼女のところには連絡がいくかもしれない。
わたしの知らないうちにお葬式とかされちゃって
彼女、泣いちゃうのかな。

たいしたことなくて、ただ寝ているだけかもしれないけど。
いつものお決まりの妄想かもしれないけど


彼は無事ですか?
誰か教えてください。



さっき、5分ぐらい、うとうとして、変な夢を見た。

夢の中で、もうひとつ夢を見ていた。

それは、彼がまだ彼女とつきあっていて
彼とわたしがキスしてしまう直前の

本当にただの友達同士だった、ふたりで遊んだ最後の夜。


車で送ってくれた彼が、
「家の前まで送る」って言って
車から家までのたかが数メートルの距離を、歩いて
家の前についてからも、まだくだらないおしゃべりを続けていて

でもやっぱり帰る時間はきて

「じゃあ」って言って、彼が車に向かって歩き出した
そのシャツの裾を

一瞬つかみかけて

少し振り向いた彼に

「ゴミ、ついてた」

ってウソついて笑って

「サンキュ」

って彼も笑って

ただ、それだけの
今まですっかり忘れていたできごと。


夢の中のわたしは、
指先にシャツの感触を感じながら目覚めて

「なんか夢見てたなあ」って

「夢の中で、すごく好きな人がいたんだけどなあ」って

思っていた。



…彼だよ。

それ、彼だよ。
忘れんなよ、バカ。

今これを書いていても、涙がぼろぼろこぼれてとまらない。

さっき
「もう少し起きてるから、何時でもいいから気付いたらメールください」
って送ったけど、やっぱり返事はこない。

全部夢だったような気すらしてくる。



彼は無事ですか?

無事だったら
彼が幸せに生きていけるんなら

別に彼女のとこに行っちゃってもいいです。
わたしなんか、ポイしてくれちゃっていいです。

だからレンラクください。
無事だって言ってください。


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