ミドルエイジのビジネスマン
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2008年02月24日(日) 冬になればモツ焼き屋に(3)

「ナンコツ塩」も捨てがたい。コリコリした骨の触感と少し肉のついている贅沢さを塩味が引き締める。注文したとき、一瞬、おしま〜いという宣告を受けたのだが、引き取り手のなくなった注文の一皿が残っていたらしく、なんとかいただくことができた。続いて席に座った人が「ナンコツしおーっ」と元気良く注文したが、タッチの差でおしまいであったらしく、「エエッ開店一時間でもうないの?」と怨嗟の声を上げていた。

わが身の幸運さを味わっていると、以前、近くに座った年配の客が、ナンコツ好きなんだけど噛み切れなくなってねと言いながら、申し訳なさそうに骨を皿に戻していたことを思い出した。

店を出て目の前の魚屋さんの店先を見ると、鯨のベーコンが売っている。更に目を凝らすと、魚の刺身に混じって鯨の刺身もあったので、お土産に両方とも少しずつ買った。なかなか手に入らないという鯨もこんな小さな商店街でひっそりと売られているのか。

焼酎で朦朧としながらも電車に乗り、途中でちゃんと乗り換えたはずだったのだが、気がつくと、見たこともない風景の中にいた。そこは新しく開発されている広大な住宅地の中にある新しい駅だった。雪の残る寒々とした風景にポツンと建っている駅の掲示板には、森と野鳥を保護する活動をしている人々の写真が貼られていた。ひとりでモツ焼き屋に行ったささやかな休日の夢は、雪の平原に建つ鉄骨とアルミサッシの駅で現実に戻った。


2008年02月15日(金) 冬になればモツ焼き屋に(2)

やっと順番が廻って来てカウンターに就くことができた。まずは、「梅割り」から。いつかテレビでやっていたが、焼酎を梅エキス(?)で割る飲み方は東京でも下町の一部にしかないそうだ。「梅割り、甘くして」などと注文して梅エキスを沢山入れてもらう客もいるので、なぜ、酸っぱいはずの梅エキスで甘くなるのか不思議だ。もしかしたら、梅酒色のシロップではなかろうか。

コップから溢れるように注いでくれるのがお約束だ。溢れてガラスの皿に溜まった焼酎をコップに戻すと、飲んで減ってしまった焼酎の惜しさも、また増えたという密やかな嬉しさとなってこみ上げてくる寸法だ。

そうして定番の煮込みを注文する。常連の通は、「煮込み黒いの」とか「白いの」と注文をつけている。中身の部位によって色が違うので、好みがあるらしい。あとはガツ生(なま)やレバ生などすぐ出てくるものを頼む。今回はレバナマを頼まなかったので今でも店がレバーを生で出しているかどうかは分からない。

続いて「ハツ塩」と「アブラタレ」。味は塩、タレ、ミソの3種類。このうちミソは煮込みの汁にさっと通して出すので要は煮込みの味だ。「アブラ」は本当に脂肪なので、おじさんの健康には良くないのかもしれないが、これがまた旨い。「アブラ、良く焼きのタレ」は最高だ。



2008年02月12日(火) 冬になればモツ焼き屋に(1)

雪もチラつく三連休の初日2月9日に東京は下町の「モツ焼き」屋にひとりで行ってきた。寒くなると、無性に食べたくなるのだ。12時半に駅に着いてしまって、「早すぎるだろうな、酒を飲む前にコーヒーで時間を潰すのもツヤ消しだなあ」などと思いながら歩いていくと、既に店の前には行列ができている。

お昼からやっているのは知っていたが、まさか飲み屋が11時半から開いているとは思わなかった。のれんの外に10人くらい並んでいるので最後尾につくと周りの人の会話が聞こえてくる。時間としてはちょうどいいよ、11時半からの人が一回転して今からドンドン出て来る、列も前回より断然短いし・・・おお、そうかい、それはラッキーだった。待つのもあと5分くらいか。あのおじさんは前回も居たよね。いつも来るのかな、そうとも、毎日来る人だっているんだ。最初から焼酎を飲んでいる人がいるけど、やっぱりビールだよね、のど越しが違うもん、だと?10年前にはそんなことを言う奴はいなかった。黙って座れば、焼酎の梅割りがコップから溢れるように注がれるのが暗黙の了解事項だった。


2008年02月03日(日) 雪の降り続いた日曜日

ローソンにDVDの自動貸出機を設置した会社がキャンペーンをやっているので利用するように奨められた。まだ試験的な試みらしい。土曜の夜に見始めて気がついたら日曜日の午前3時だ。ふと外を見ると雪が降っている。

何時間か寝た後、まだ眠い目を擦りながら朝食を摂った頃はみぞれになりかけていたが、食後のコーヒーを飲んでいるうちに持ち直して本格的な綿雪になった。長靴を履き、散歩に出る。近くの木々には帽子のように積もり、遠くの森も降りしきる雪の幕に霞んでいた。

空を仰げば直径1〜2センチほどの無数の雪片が次から次へと落ちてくる。中には途中でくっついたのだろう、長さ3センチもの大きなものもある。遥か上空から目をつけておいた一片の雪に狙いを定め、ひらひらと舞い落ちてくるのを待つ。そうして、地面に着地する前に空中でキャッチする。

暖かなこの地の雪は、明日には何事もなかったように消えていることだろう。


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